堀家特許事務所

第76回コラム(2024年4月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  以前の第69回コラムでお伝えしたように、本日2024年4月1日から、今まで
 紙で届いていた「特許証」や「登録証」は、基本的にオンライン発送となり、特許庁
 様から電子データの「PDFファイル」で届くようになります。詳細は、特許庁様の
 「発送手続のデジタル化について」のページをご参照くださればと思います。
  なお、以前のコラムでは、

  実際に、このデジタル化が始まってみないとわからないのですが、例えば、まずは
 「オンライン発送利用希望」は「あり」としておき、
 <A>厚紙に印刷された「特許証」などをご希望の方の案件は、わざと一定期間内は
    オンラインから受領せず
 <B>デジタル化された「特許証」などの電子データをご希望の方の案件は、逆に、
    一定期間内にオンラインから受領をする
 等のように、<A><B>を併用してはとも感じています。

 と書いたのですが、実際はランダムに発送書類がオンラインで届くため、案件ごとに
 紙の「特許証」などにするか、「特許証」などの電子データにするかを選べないため
 紙の「特許証」などをご希望の際は、「発送手続のデジタル化について」のページの
 『Q6』にも記載されているように、

  Q6. 特許庁が発行する特許(登録)証と同水準の印刷物を出力するには、どのよう
 な規格にすればいいですか。
  A6. 以下の規格を参考にしてください。
  ・特許、実用、意匠:
   色上質紙(クリーム)、厚さ0.18mm、斤量84.5kgA版(坪量153.5g/m2)
  ・商標:
   マットコート紙(半光沢紙)または上質紙(非塗工紙)、厚さ0.18mm、斤量
   86.5kgA版(坪量157g/m2)

 とのことでした。
  なお、オンライン発送の場合、現状の紙発送より約1週間早く「特許証」などの電
 子データが届き、オンライン発送しなかった場合、現状の紙発送より約1週間遅く紙
 の「特許証」などが届くとのことで、
  弊所では、全ての案件をオンライン発送とし、紙の「特許証」などをご希望のお客
 様には、費用はかかりますが、上述した印刷物の出力にて対応いたします。


 2018年1月から毎月更新してきたコラムでしたが、
 一旦、今回の2024年4月1日で最後といたします。

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第75回コラム(2024年3月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  みなさま、特許権や実用新案権を取ったけど、どう活用していいかわからない、な
 かなかご商売に繋がらないという方は、おられますでしょうか?そのような場合は、
 ご自分・自社の特許権や実用新案権を、開放特許情報データベースに登録しては如何
 でしょうか。
  開放特許情報データベースとは「インターネット上で、企業、大学、研究機関等の
 開放特許を一括して検索できる公的なサービス」で、この開放特許情報データベース
 の検索、閲覧、登録は無料で利用できますが、該当特許を利用する場合は、登録者と
 契約(有料)が必要になります。詳細は、開放特許情報データベースの概要等をご覧
 くださればと思います。
  私もお客様から委任いただいて登録者として、お客様の特許権と実用新案権を登録
 したところ、登録から2ヵ月ほどで「開放特許情報データベースを見た」と問合せが
 ありました。
  みなさまも、開放特許情報データベースを利用してみてはいかがでしょうか。

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第74回コラム(2024年2月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
 令和6年能登半島地震により被災された地域の皆様に心よりお見舞い申し上げます。
 いつもは知財に関することを書いていますが、今回は主に防災についてのことを書き
 ます。昨日、大阪市阿倍野区にある体験型防災学習施設「大阪市立阿倍野防災センタ
 ー あべのタスカル」の体験コースに行ってきました。例えば、災害の恐ろしさを体
 感できる「タスカルシアター」や、「減災を学ぶ」、「消火を学ぶ」、「煙を学ぶ」
 、「津波避難を学ぶ」等、いずれも非常に勉強になったのですが、特に「震度7体験
 」では、1995年の阪神・淡路大震災の揺れ(直下型地震20秒)を体感できるだ
 けでなく、今後30年以内に発生する確率が70から80%である南海トラフ地震の
 揺れ(海溝型地震65秒、主に横揺れ)も体感し、すぐに突っ張り棒等の対策が必要
 と感じました。皆様も是非「あべのタスカル」など最寄りの防災センター等にて行か
 れてはと思います。
  最後に、特許等の出願をなさっておられる方で、ひょっと地震などの災害により、
 期限のある手続が間に合わなくなってしまった等の場合には、所定の申出により手続
 期間の救済が受けられます。詳細は、特許庁様のHP「災害関連情報」をご覧くださ
 い。

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第73回コラム(2024年1月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  特許や商標、意匠などの出願をした際、拒絶理由通知書を受けた方は多いと思いま
 すが、その拒絶理由通知の応答期間は、国内居住者であれば、特許は60日で、商標
 や意匠は40日ですが、それぞれの期間を延長することが出来ることをご存知でしょ
 うか?
  この期間延長の請求については、応答期間内に行う場合と、応答期間経過後に行う
 場合に分かれており、何れの場合にも請求の際に手数料がかかりますが、応答期間内
 に行った場合の手数料は、特許・商標・意匠共通で、請求書1通につき2100円で
 すが、応答期間経過後に行った場合の手数料は、請求書1通につき、商標で4200
 円、意匠で7200円ですが、特許では51000円となるため、注意が必要である
 と共に、やはり出来る限り、期間内に応答する方が得と考えます。詳細については、
 特許庁様のHP(特許と商標意匠)をご覧ください。
  なお、商標の期間延長では、特許や意匠とは異なり、応答期間が満了する前に期間
 延長がなされた場合でも、応答期間経過後に、再び期間延長の請求を行うことが可能
 で、国内居住者であれば、応答期間内の期間延長の1ヶ月と、応答期間経過後の期間
 延長の2ヶ月で、合計3ヶ月の期間延長が可能になります。
 ただし、特許や意匠では、期間満了前に延長されている場合、期間経過後の延長請求
 が出来ない点にご留意ください。

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第72回コラム(2023年12月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  みなさま、特許における先使用権というものをご存知でしょうか?
 先使用権について、特許庁様のHPでは「先使用権は、他者がした特許出願の時点で
 、その特許出願に係る発明の実施である事業やその事業の準備をしていた者に認めら
 れる権利」と記載されており、
  例えば、ある製品について特許出願しなかったものの、その製品の特許権を、他社
 に取られてしまった場合でも、その他社特許権の出願の時には、その製品を製造・販
 売等していたことを『立証』できれば、その製造・販売等を続けられる権利です。
  ただ、この『立証』が難しく、特に「出願より前から」等の日付を立証することが
 ポイントになるものの、例えば、その製品の資料に日付がなかったり、その資料を改
 ざんされた可能性がある等のため、先使用権が認められない場合があり、多くの方々
 が苦慮されていました。

  このような方々は、ぜひタイムスタンプや電子署名などのトラストサービスをご活
 用くださればと思います。ここで、タイムスタンプとは「電子データがある時刻に存
 在し、その時刻以降に当該データが改ざんされていないことを証明する仕組み」のこ
 とであり、電子署名とは「電子データを作成した本人・組織として、ヒト・組織の正
 当性を確認できる仕組み」のことで、詳細は、電子認証局会議様のHPや、総務省様
 の動画をご覧くださればと思います。
  このタイムスタンプや電子署名などは、多くの方がお使いの「Adobe Acrobat Re
 ader(登録商標)」にて、無料でPDFファイルに行うことが出来ます。なお、タイ
 ムスタンプなどには、第三者によって暗号アルゴリズムが解読されることを防ぐため
 法令によって有効期限(最長5年や10年など)が決まっている点にはご留意くださ
 い。
  また、PDFファイルでタイムスタンプや電子署名などを実際にやってみると1件
 1件に結構、手間と時間がかかるため、大量のPDFファイルにタイムスタンプや電
 子署名などを行う場合には、市販のソフトウェアを使うことをご検討くださればと思
 います。

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第71回コラム(2023年11月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  我々弁理士が主に扱う産業財産権とは、特許権や商標権、意匠権、実用新案権など
 4つありますが、みなさまは、それぞれの権利期間(「存続期間」と言います。)を
 ご存知でしょうか。
  特許権は、基本的に「出願日」から20年であり、その結果、審査に時間がかかる
 ほど存続期間が短くなることになり、例えば、出願-→審査に5年-→登録=⇒存続
 期間=⇒出願日から20年で消滅となった場合、20年-5年で、実際の存続期間は
 約15年になります。
  実用新案権は、「出願日」から10年ですが、基礎的要件のみを審査し、その他の
 新規性や進歩性などは無審査ですので、審査にかかる時間も短くなり、例えば、出願
 -→審査に数か月-→登録=⇒存続期間=⇒出願日から10年で消滅となった場合、
 10年-数か月で、実際の存続期間は約9年半になります。
  意匠権は、「出願日」から25年と長く、また「出願日」からということで、特許
 権と同様に、審査に時間がかかるほど、存続期間が短くなります。
  この点、商標権は特殊で、その存続期間は「登録日」から10年であるため、審査
 に幾ら時間がかかっても、存続期間はきっちり10年確保されます。また、商標権に
 については、存続期間を何度でも更新することが可能であることから、更新し続けれ
 は半永久的に存続期間が続きます。

  ちなみに、商標登録第1655号の商標権は、その経過情報や登録情報を見ますと
 登録日が『1902年7月16日』となっており、更に2022年1月21日に更新
 したため、現在の存続期間が消滅する日が『2032年7月16日』であることから
 存続期間は、少なくとも130年と非常に長くなっています。
  存続期間が長い商標権を調べてみるのも、おもしろいかもしれません。

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第70回コラム(2023年10月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  みなさま、特許庁様、(独)工業所有権情報・研修館(INPIT)様が運営なさっ
 ておられる「J-PlatPat」をお使いになられたことはありますでしょうか。 私は非常
 によく使わせて頂いており、非常に便利な機能が無料で使え、大変ありがたいのです
 が、先月2023年9月、更に『特許出願や特許権等のリーガルステータス』機能が
 追加されました。
  詳細は、INPIT様の「J-PlatPat リーガルステータス機能について」のページ
 をご覧くださればと思いますが、例えば、気になる他社の「会社名」などで特許・実
 用新案検索いただきますと、その会社の特許出願や特許権等の一覧が表示されますが
 その一覧の右から3番目に「ステータス」の列が追加され、各特許出願等の経過情報
 ボタンを押し、別ウインドウを見なくとも、端的に『審査請求前 公開公報の発行』
 や『審査中 拒絶理由通知』、『特許 有効 登録公報の発行』などの状況が示され、
 大変便利です。
  なお、この「ステータス」の列は、特許番号等を入力する特許・実用新案番号照会
 でも表示されますし、「J-PlatPat リーガルステータス機能について」によりますと
 第2弾のリリースも予定されており、非常に楽しみです。
  みなさまも、ぜひ「J-PlatPat」をご活用くださればと思います。

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第69回コラム(2023年9月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  特許出願などの審査を無事クリアしますと、特許庁様から賞状のような「特許証」
 や「登録証」が、代理人弁理士を経る等をして皆様の元へ届きます。このような「特
 許証」などは、現在、厚紙に印刷されてカラーで届くのですが、お客様によっては、
 額に入れて飾ったり、展示会で製品に特許証を飾り来場者へのアピールに使う方もお
 られる一方で、毎月100件前後の紙の「特許証」などが届く方からは、保管場所に
 困る等の声も聞きます。
  そこで、特許庁様では「特許証」など現在も紙で発送している書類や、紙が必須の
 申請手続をデジタル化する計画を立てておられ、詳細は「申請手続及び発送手続のデ
 ジタル化について」のページをご覧ください。なお、このページの下の方に「特許証
 」などの受信方法についての言及があり、その言及では『インターネット出願ソフト
 の「オンライン発送利用希望」を「あり」としている方に対して、1.~7.(「特許証
 」などのこと)がオンライン発送となります。既存のオンライン発送書類と同様に、
 「オンライン発送利用希望」を「なし」としている場合又は一定期間内にオンライン
 から受領しなかった場合は、オンライン発送対象外となり、普通郵便で発送します。
 』等とのことでした。

  実際に、このデジタル化が始まってみないとわからないのですが、例えば、まずは
 「オンライン発送利用希望」は「あり」としておき、
 <A>厚紙に印刷された「特許証」などをご希望の方の案件は、わざと一定期間内は
    オンラインから受領せず
 <B>デジタル化された「特許証」などの電子データをご希望の方の案件は、逆に、
    一定期間内にオンラインから受領をする
 等のように、<A><B>を併用してはとも感じています。
  このデジタル化の開始時期などは、まだ先であり、詳細がわかり次第、逐次お伝え
 いたします。

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第68回コラム(2023年8月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  以前も押印省略について、このコラムで取り上げましたが、2022年9月26日
 に更新された特許庁様のHP「特許庁関係手続における押印の見直し」でも言及され
 たように、押印が必要な特許庁様に対する申請手続が『797種』→『33種』まで
 減っています。このうち、押印が残った手続『33種』は、偽造による被害が大きい
 手続であり、例えば、特許権等の譲渡による権利移転登録申請証明書の譲渡人(元々
 の権利者様)の押印などがあり、この押印に対しては、個人・法人を問わず、印鑑証
 明書の提出が必要です。
  ただ、この印鑑証明書には注意が必要で、元々の権利者様が個人の方で、普段は、
 旧氏(旧姓)を使っておられる方がおられますが、譲渡証書など書類における名字も
 旧氏(旧姓)のまま記載してしまった場合、いざ実際に印鑑証明書を取ってみると、
 印鑑証明書では新しい名字(新姓)で登録されていることに気付くケースがあるかも
 知れません。このようなケースでは、譲渡証書などの名字を『新姓(旧姓)』のよう
 に旧氏(旧姓)を併記して、新姓の印鑑証明書を提出することとなるようです。

  なお、旧氏(旧姓)の併記につきましては、願書などの特許庁様に提出する全ての
 書類において、発明者、出願人等の氏名欄において旧氏を併記することが可能となっ
 ています。詳細は特許庁様のHP「特許庁への手続において旧氏(旧姓)併記が可能
 になります」をご覧ください。

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第67回コラム(2023年7月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  以前、何回か立体商標についてお話したのですが、今年に入って約6ヵ月で81件
 の立体商標が登録になっているようですので幾つかご紹介しますと、フェルトペン
 コーヒー入り乳飲料のパック薄黄色の細い短冊が透明な筒に入ったもの腕時計
 スニーカー乗用車などがありました。
  それぞれの経過情報をみますと、不服審判まで請求して登録になったものもあれば
 一度も拒絶理由通知書を受けずに、一発で登録になっているものもあり、特に、意見
 書や不服審判請求書での反論内容などを読んでみるとおもしろいかも知れません。
  最後に、立体商標の商標権について争われた侵害訴訟はあまり多くないのですが、
 みなさま一度は目にしたことがあると思われるハンドバックの立体商標に関する商標
 権について、一方は侵害が認められ、他方は侵害が認められなかった2つの裁判例を
 ご紹介します。裁判における立体商標の類否判断の参考になるのではと思います。

 <商標権侵害が認められた裁判例>
  第1審:令和3年(ワ)第22287号(判決文添付文書1
    ※第2審への控訴等により、結果が変わる可能性は残っています。

 <商標権侵害が認められなかった裁判例>
  第1審:平成31年(ワ)第9997号(判決文添付文書1
  第2審:令和2年(ネ)第10040号(判決文
    ※商標権侵害は認められなかったものの、不正競争防止方2条1項1号、2号
     の不正競争は認められています。

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第66回コラム(2023年6月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  また『分割』の話で恐縮ですが、今回は『分割』の使われ方についてです。
 特許・実用新案審査基準の第VI部第1章『第1節 特許出願の分割の要件』の概要では、
 『特許法第44条は、特許出願の分割に関する規定である。同条は、出願人が二以上の
 発明を包含する特許出願の一部を新たな特許出願とすることができる旨を規定してい
 る。』と記載されています。これを読みますと、「分割って、一部を分けて出願でき
 るだけなんやな・・・」と感じますが、現実には、もっと大胆な使われ方をしている
 ようです。
  例えば、A出願(親出願A)からB出願(子出願B)を分割した際、親出願Aでは
 「○○塩または炭酸○○・・・を含有する物。」との請求項でしか特許権を取得でき
 なかったとしても、子出願Bでは「○○を含有する化合物・・・を含有する物。」と
 の請求項で特許権を取得しよう、つまり、子出願Bで、親出願Aによる特許権より広
 い範囲の特許権を取得しようとの意味合いで、『分割』が使われたことがわかります
 (特許7048960特許7255931等ご参照)。
  ただし、ダブルパテントではない(同日出願において同一ではない)ことや、親出
 願Aに「○○を含有する化合物」との記載がある(新規事項追加ではない)こと等も
 同時に見たす必要があり、いつでも親出願より広く子出願で権利化できる訳ではあり
 ません(なお、同日出願において同一でないことや、新規事項追加でないことについ
 ては、特許・実用新案審査基準の第III部の『第4章 先願(特許法第39条)』や第2章『
 第3節 新規性・進歩性の審査の進め方』もご参照ください。)

  もし「特許査定が出たけど権利範囲がちょっと狭いなぁ・・・」等お感じの際には
 『分割』を検討なさっては如何でしょうか。

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第65回コラム(2023年5月)

(現在、このドラマは、放送を終了しています。)
 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  今回は、知財ドラマのご紹介です。今年4月12日から、毎週水曜日よる10時~
 日本テレビ系列にて、知的財産をテーマにしたドラマ「それってパクリじゃないです
 か?」が放送されています。
  このドラマは、奥乃桜子氏の原作「それってパクリじゃないですか? ~新米知的財
 産部員のお仕事~」(集英社オレンジ文庫)をドラマ化したものであり、弁理士の方
 が監修をなさっておられ、特許など知的財産の一般的な話だけでなく、冒認出願や、
 先願主義などのマニアックな言葉も、わかりやすく説明してくれています。主役は、
 NHK朝の連続テレビ小説にも出演された女優さんと、ジャニーズ事務所所属の俳優
 さんで、知的財産を知らない方でも入り易いドラマになっていると思います。
  Tverでは、最新話だけでなく、1話から遡って見れますので、ぜひご覧くださ
 ればと思います。

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第64回コラム(2023年4月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  特許出願に『分割』という制度があることをご存知でしょうか。この『分割』とは
 特許法44条に規定された、二以上の発明を含む特許出願の一部を新たな出願とする
 制度で、例えば、他社にとって脅威な特許出願を次々に『分割』させることで、その
 他社にプレッシャーをかけ続けることが出来るなど、上手く活用すれば非常に有効な
 制度です。
  この『分割』が可能な時期の1つに「特許をすべき旨の査定の謄本の送達があつた
 日から30日以内」があり、今回はこの「30日以内」について争われた事件「令和
 4年(行ウ)第382号(判決文)」をご紹介します。
  この事件の概要は、その判決文の2ページに「第2 事案の概要」に記載されてお
 りますように、原告のある特許出願に対して、令和2年7月7日に特許査定の謄本が
 原告に送達され、令和2年7月20日にて第1年から第3年までの特許料を納付し、
 令和2年7月29日に特許権の設定登録がされた後、特許査定の送達から30日以内
 である令和2年8月5日に、その特許出願を『分割』したものの、却下処分になった
 ため、この却下処分の取消しを求めて、原告は訴訟を提起しました。

  結果として、この裁判での原告の請求は棄却されたのですが、その理由は判決文
 特に8ページに「第3 当裁判所の判断」に記載されたように、「法44条1項柱書
 きは、特許出願人は、一の特許出願中に二以上の発明が含まれている場合、その特許
 出願の一部を新たな出願(分割出願)とすることができる旨規定する。ここで、「特
 許出願人」及び「特許出願」とされていることに鑑みると、同項の規定は分割出願の
 もととなる特許出願が特許庁に係属していることを前提とするものと理解される。
 ・・法44条1項はもととなる特許出願が特許庁に係属していることを前提とするも
 のと理解されることを踏まえると、特許査定の謄本の送達があった日から30日以内
 であっても、特許権の設定登録がされればその特許出願は特許庁に係属しなくなる以
 上、これをもとに分割出願をすることはできないと解される。」とのことです。

  なお、特許料を納付してから、特許権として登録されるまでの日数は、出願ごとに
 バラつきはありますが、最短で3日というケースもあり、この事件もふまえますと、
 特許査定の後に『分割』する際は、分割後・特許料納付を「どちらも30日以内」に
 行う等をなされ、『分割』を有効に活用くださればと思います。

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第63回コラム(2023年3月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  今月ご紹介する判決例は、特許の職務発明に関する事件で「令和4年(ワ)第18
 48号(判決文添付文書1)」です。この判決例の概要は、その判決文の1~2ペ
 ージにかけて「第2 事案の概要」に記載されておりますように、ある従業員がした
 発明は在職中の職務発明だから、その発明に関する特許権を会社に移転させろ、とそ
 の会社が原告として、その元従業員の設立した会社を被告として訴えた事件です。
  この判決文中、特に2~6ページにかけての「第3 争点に関する当事者の主張」
 から「第4 判断」に記載されたように、原告は、裁判の当初においては、職務発明
 取扱規程(予め会社に特許を受ける権利を取得させることを定めた規程)の制定日を
 、元従業員の方が退職する4年以上前の「平成26年1月1日」と主張していたにも
 拘わらず、
 被告から『その規程に用いられる「取得」「相当の利益」との文言は「平成27年」
 特許法等の一部を改正する法律で初めて採用されたものであって、「平成26年1月
 1日」時点でこのような文言が使われた規程が存したのは極めて不自然』との指摘
 受けて、原告は裁判の途中で『その制定日は「平成30年9月3日」であって、平成
 26年1月1日にさかのぼって適用される』と主張を変えており、
  その点、判決文中で、この事件を担当なさった裁判官の方も『主張が変遷した経緯
 自体、被告代表者が原告に在職中に甲12規程が制定されたことを疑わしめるに十分
 である。』とはっきりお書きになっておられ、結果は「原告の請求をいずれも棄却す
 る(つまり、原告会社の負け)。」となっています。
  なお、この事件は第1審の判決例であるため、もし第2審の知的財産高等裁判所に
 控訴された場合、結果が変わる可能性は残っています。

  この事件をふまえますと、裁判でなくとも当然ですが、嘘の(又は、嘘と判断され
 そうな)主張・証拠は絶対にせず、相手方の反論も予想して、隙のない準備をすべき
 です。
  また、職務発明規程がない中小企業様や、不安を感じる方は、特許庁様の「中小企
 業等の皆様へ ~職務発明規程の導入~」をご参照くださればと思います。

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第62回コラム(2023年2月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  日本国外にて特許や商標などを出願・権利化なさった方へ、ある日突然、英語等で
 出願や権利を維持するために所定の口座へ費用を振り込めとの謂わば『振込詐欺』の
 ような通知や手紙が届いたことはありませんか?
  このような通知等は、10年以上前から非常に多くの事例が、特許や商標に関する
 国際出願の管理を行っている世界知的所有権機関(WIPO)のホームページや、日
 本特許庁のホームページにて、注意喚起がされています。
  ◎特許の国際出願:特許協力条約(PCT)については、
   「ご注意ください:WIPO国際事務局以外の者からの手数料請求書について
  ◎商標の国際出願:マドリッド協定議定書(マドプロ)については、
   「警告:商標に関する不審な請求書
  ◎日本特許庁では、
   「ご注意ください:条約上規定された組織外からの手数料請求について

 特許や商標の国際出願に関する『振込詐欺』のような通知等については、上記HPに
 多くのサンプルが掲載されておりますので、ぜひご参照ください。

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第61回コラム(2023年1月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  今月ご紹介する判決例は、著作権に関する損害賠償等請求事件である「令和4年(
 ワ)第12062号(判決文添付文書1)」です。この判決例の概要はその判決文
 の2ページの「第2 事案の概要」に記載されているように「被告らほか1名は原告
 らの著作物である映画の著作物を編集して作成した動画をインターネット上の動画投
 稿サイト「YouTube」に投稿(謂わば、違法アップロード)した」のですが判決文
 の3ページの「3 被告らの主張」に記載されているように「事実は認め、主張は争
 わない。」としたため、原告らの主張が全面的に通りました。
  被告らにも、訴訟代理人弁護士がついていたにも拘わらず、争わなかったというこ
 とは、全く反論の余地なく、TV等で再三流れているように『違法アップロードは、
 絶対にしてはいけない』ことがわかります。

  それともう1つ、判決文の1ページの「主文」に『被告らは、原告らそれぞれに
 対し、連帯して以下の額及びこれに対する令和4年6月11日から支払済みまで年3
 %の割合による金員を支払え。』とのことであるところ、原告は「映画の製作・配給
 等を目的とする株式会社」13社であり、この13社へ支払う額の合計が「5億円」
 で、これを個人である被告らが、連帯したとしても、支払えるのか?自己破産された
 ら逃げられるのか?という疑問がわくかもしれません。
  しかし、当然ですが、破産法第253条第1項に「破産者が悪意で加えた不法行為
 に基づく損害賠償請求権」や「破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又
 は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)」
 などは、自己破産をしても免除されず、支払う必要があると規定されており、判決文
 の2ページの「2 原告らの主張」に記載されたように「本件各映画作品をそれぞれ
 編集して、約2時間の作品全体の内容を把握し得るように10~15分程度の動画を
 作成し」、「被告らは、少なくとも700万円程度の広告収益を得た。」ことから、
 被告らは明らかに、悪意で(原告らの映画であると知って)「YouTube」に投稿した
 ことから、被告らは自己破産しても合計「5億円」の支払いから逃げられません。

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第60回コラム(2022年12月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  今月ご紹介する判決例は、特許権に関する損害賠償等請求事件である「令和3年(
 ワ)第11507号(判決文)」です。この判決例中の判断理由は、その判決文49
 ページの「第4 当裁判所の判断」から記載されているのですが、当該特許権の本件
 明細書や図面の内容の一部が、その62ページまで延々と複写(コピペ)されており
 例えば、
  ①本件明細書の段落【0009】や【0023】、図4Aを根拠として、先に「本
   体」や「低伸縮領域」の意味を特定した後に、請求項1中の「本体を具備し、上
   記本体よりも伸縮性の低い低伸縮領域を本体に設け」の意義や被告製品の充足性
   を判断していました(判決文62~65ページ)。
 以下、同様に
  ②本件明細書の段落【0010】や【0011】、【0023】を根拠として、先
   に「膝蓋骨を吊り上げ」るの意味を特定した後に、請求項1中の「膝蓋骨を吊り
   上げ、大腿四頭筋の機能を補助するために・・・本体正面に設けた正面吊り領域
   を具備し」の意義や被告製品の充足性を判断し(判決文65~67ページ)、
  ③本件明細書の段落【0002】や【0020】を根拠として、先に「側面圧迫領
   域」の意味を特定した後に、請求項1中の「大腿骨及び周囲筋腱を圧迫するため
   に・・・本体両側面に設けた側面圧迫領域を具備し」の意義や被告製品の充足性
   を判断し(判決文67~70ページ)、
  ④本件明細書の段落【0012】や【0031】、【0032】、図4、4A、そ
   して、原告が提出した証拠(甲11(辞書と思われます。))を根拠として、先
   に「固着」や「樹脂より成る」の意味を特定した後に、請求項1中の「樹脂より
   成る低伸縮性材料を本体に固着した構成」の意義や被告製品の充足性を判断して
   いました(判決文70~74ページ)。

  これは、特許法70条(特許発明の技術的範囲)に
   第1項「特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づ
       いて定めなければならない。」
   第2項「前項の場合においては、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し
       て、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとする。」
 と規定されており、裁判官の方も、特許法70条1、2項に従っているからです。

  この判決例の他にも、特許権に関する裁判では、非常に細かく明細書や図面を見て
 侵害か否かを判断なさることから、特許出願の時から、明細書や図面でも余計な限定
 をされないように気を付けるべきです。

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第59回コラム(2022年11月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  昨年12月と今年6月ご紹介した意匠権の判決例を覚えておられますでしょうか?
 その判決例は第1審が「令和2年(ワ)第14629号(第1審判決文添付文書1
 )」で、第2審が「令和3年(ネ)第10075号(第2審判決文)」)でした。
  日本では、正しい裁判を実現するために三審制度を採用しており(裁判所様のホー
 ムページ「概要」ご参照)、第2審の判決に不服がある場合、最高裁判所様に対して
 「上告提起」または「上告受理申立て」を行うことが出来るところ、その期間は、第2審
 判決正本が送達された日の翌日から起算して『2週間』です(裁判所様のホームペー
 ジ「上告申立ての手続」ご参照)。

  第2審の裁判年月日は「令和4年3月24日」であり、第三者にもその内容が公開
 されていて、第三者に公開される前には、当然当事者には判決正本が送達されている
 と考えられます。
  また、「上告提起」または「上告受理申立て」 の平均審理期間は3ヵ月ほどである(
 裁判所様の「上訴審における訴訟事件の概況」のPDF19~24頁ご参照)ことを
 ふまえれば、第2審の裁判年月日「令和4年3月24日」から半年以上経過した20
 22年11月1日の時点においては、
  ・「上告提起」または「上告受理申立て」をしたものの、
   却下決定や棄却決定、不受理決定(第2審確定)となった可能性が高く、
  ・そもそも「上告提起」や「上告受理申立て」をしていない可能性もある
   (これも第2審確定)
 と考えます。

  この事件については、引き続き最高裁判所から判決が出ないか追いますが、第2審
 の結論のように、本件意匠と被告意匠は「非類似(=非侵害)」で確定しそうです。
  なお、第2審の判断の根拠は、第2審判決文の11ページ等を参照いただくか、本
 コラムの第54回(2022年6月)をご参照ください。

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第58回コラム(2022年10月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  「あの会社の特許出願、気になるなぁ」とか、「この特許出願が特許権になると
 こまるなぁ」等はありませんか。
  そのような場合、弊所では、お客様が気になる出願人・権利者名や、特許出願の
 公開番号などをお教え頂ければ、定期的に、その出願人等や、特許出願などの経過
 情報を調べ、何か動きがあった際には、お客様にお伝えするサービスを行っていま
 す。
  また、弊所のサービスは、PC上で行う作業をロボットで自動化する「RPA(
 Robotic Process Automation)」を使って行っていることから、非常に安価にご提
 供できます。もちろん特許以外に、商標や意匠、実用新案登録についても、同様の
 サービスをしております。
  もし気になる会社などの知的財産の動向を追いたい際には、ぜひ弊所にご用命く
 ださい。

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第57回コラム(2022年9月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  ご商売をなさっている際、共同開発契約や、共同出願契約、秘密保持契約など、
 他社と契約を結ぶ機会もあるかと思います。ただ、契約を結ぶ際にはおおむね良好
 な両社の関係がその後こじれる可能性もゼロではなく、余計な争いの元とならぬよ
 ように、両社が同意した内容を契約書に明確な表現で漏れなく盛り込むべきです。
  そんな契約について、気になる判決例が出ましたのでご紹介いたします。
  その裁判例とは「令和3年(ワ)第2736号(判決文)」で、ある特許権につ
 いてライセンス(使用許諾)契約を結んだものの、ライセンスを受ける側(以下「
 X社」)が特許使用料を支払ったにも拘わらず、特許権者側(以下「Y社」)がそ
 の特許権に関する技術情報をX社に開示してくれないとして、X社がY社を訴えた
 裁判です。
  この裁判では、訴えられたY社の社長は「訴外の他社と秘密保持契約があるため
 製造技術に関するCore部分は、技術情報開示の対象に含めない」旨(非開示特
 約)を、X社と口頭で合意した等を主張しました。
  しかし、
  ・本当に非開示特約が存在したのであれば、その旨を契約書上明記しておくのが
   通常であると考えられ、
  ・X社はY社に対し、その技術情報の開示等を求めたが、Y社は、本訴訟に至る
   までの間において、X社に対し、非開示特約の存在について言及等したことは
   うかがえない。
  ・技術情報のCore部分の内容自体が判然とせず不明確であるといわざるを得
   ない。
 等々を理由に、結局、Y社は全面敗訴しました。

  契約書は「漏れなく明確に」作成する点、ご留意ください。

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第56回コラム(2022年8月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  先日、商標について、少し気になる判決例が出ましたのでご紹介いたします。
  その裁判例とは「令和2年(ワ)第8061号(判決文添付文書1添付文書2
 」で、この原告の商標権は、判決文のPDF2ページや商標登録6232133号であり、
 これに対する被告の商品が「かばん類,袋物」で同一で、被告の標章(添付文書1
 参照)との差異が、記号部分「#」の有無のみであることから、まずは少なくとも
 類似と言えます。
  ただ、被告サイト(添付文書2ご参照)をご覧いただきますと、商品「かばん類,
 袋物」の商品の名称(=商標)として使用されているのは、最も大きい写真のそば
 にある【ivory×black】のような気もしますが、このサイトのどこに、
 商標登録6232133号に類似した標章があるか、わかりますでしょうか?

  その詳細は、判決文のPDF9~10ページの「イ商標的使用について」をご覧く
 ださい。以前の意匠権の裁判例でも述べたように裁判では、ご自分が感じている通り
 判断されない場合もあり、万全の準備でのぞまれてはと考えますと共に、商標におい
 て今後は、記号部分「#(ハッシュタグ)」の後につける文言についても他社の登録
 商標を侵害していないか等を留意する必要があると考えます。
  なお、この裁判は第1審であり、もし知的財産高等裁判所に控訴された場合には、
 結論が変わる可能性があります。ご注意くださればと思いますし、この裁判が確定等
 した際には、改めて、このコラムでご紹介できればと考えています。

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第55回コラム(2022年7月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  御社製品が、競合他社の特許権や商標権、意匠権などの知的財産権を侵害していそ
 うな場合、どうされますでしょうか?本来であれば、その競合他社の特許権などに対
 して、無効審判や異議申立、情報提供をしたり、逆に、御社製品の設計変更などの対
 策をすることになりますが、何れの対策であっても、費用がかかります。例えば、無
 効審判や異議申立であれば100万~数百万円かかりますし、設計変更であれば費用
 がかかる他に、設計変更したために売れなくなる等の恐れもあります。
  そのような場合、その競合他社の過去の判決例を検索してはいかがでしょうか。
 実際に、ある業界の競合他社同士で、毎月100件前後の特許出願を行っている2つ
 会社名(仮にA社とB社とします)を、以前でもご紹介した「裁判例検索」のキーワ
 ードに入力して調べてみたのですが、A社が原告(訴えを起こした側)の裁判例は5
 件ヒットするものの、B社が原告の裁判例は1件もヒットしませんでした。
  この「裁判例検索」は、全ての裁判例が検索できる訳ではないですが、昭和以前の
 判決例もヒットすることから、平成・令和のここ30年ほどは、同程度の特許権を所
 有していても、訴えを起しがちな社風の会社と、全く訴えを起こさない社風の会社が
 あるとも言えます。
  コロナ禍等もあり費用をかけたくない場合など、さしあたり「裁判例検索」で競合
 他社の社風を調べてみるのも、1つの判断材料と考えます。

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第54回コラム(2022年6月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  以前ご紹介した意匠権の判決例を覚えておられますでしょうか?その判決例は、第
 1審が「令和2年(ワ)第14629号(第1審判決文添付文書1)」でしたが、
 第2審の知的財産高等裁判所に控訴され、その判決が出ました(「令和3年(ネ)第
 10075号(第2審判決文)」)。
  結論としては、第1審と同じで、本件意匠と被告意匠は「非類似(=非侵害)」で
 したが、その判断の根拠は、第2審判決文の11ページに記載されたように、

 『本件意匠の要部である上記形状は,各斜面体が,反時計回り及び時計回りいずれに
 向かっても漸次幅寸法が小さくなる二つの曲線及び一つのおおむね直線で囲まれた形
 状であり,捕捉部を中心として等角度位置に計6個配置されていることとも相まって
 ,需要者に対し,渦流生成部において水が渦を巻くように整然と流れるような構造
 あるという印象を与えつつ,渦流生成部に斜面体以外の構造体が設けられていないこ
 とにより,全体として凹凸が少なくシンプルですっきりとした印象を与えるものとい
 える。
  これに対し,被告意匠において各斜面体の反時計方向側の外周部に形成されている
 堰部は,別紙被告意匠目録及び別紙被告意匠説明図の平面図及び斜視図のとおり,需
 要者が上方又は斜め上方から観察した場合において,容易に看取される程度の高さや
 幅を有するものであり,各斜面体を区切るために独立して設けられた構造体であると
 認識される形状及び大きさであるといえる上,堰部が斜面体と共に明確な渦状模様を
 顕出させることにより,需要者に対し,斜面体に何らの構造体が設けられていない場
 合と比較して,より勢いのある水流が生じる構造であるという印象を与えるものとい
 える。
  以上の事情を考慮すると,本件意匠及び被告意匠における上記差異点は,需要者に
 対して大きく異なる美感を生じさせるものというべきである。』

 とのことでした。
  なお、この判断には、本件意匠より前に存在した公知意匠の存
 在も大きく影響しています。
  意匠が「似ている(類似)」or「似ていない(非類似)」かのご参考にしていただ
 ければ幸いです。

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第53回コラム(2022年5月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  今回は、女性用ハイヒールの商標出願と、ある裁判例をご紹介いたします。
  その商標出願は、現在も拒絶査定不服審判中で、その出願番号は「商願2015-029
 921」です。又、この商標出願の出願人等が原告となって、不正競争防止法による差
 止等請求訴訟が行われています。この商標出願「商願2015-029921」は、女性用ハ
 イヒールの靴底に赤色を付して構成され、謂わば、位置商標(文字や図形等の標章を
 商品等に付す位置が特定される商標)であるとも言えることから、位置商標の権利化
 や権利行使などの参考になるのではと思います。以下、時系列に沿ってご紹介いたし
 ます。

 ・2015年04月01日:商標出願「商願2015-029921
           |この間、やりとりされた書面等は
           | ・拒絶理由通知書1回
           | ・協議指示書1回
           | ・刊行物等提出書10回
           | ・上申書14回
           | ・意見書2回
           | ・物件提出書1回
           | ・面接記録2回
           | ・応対記録1回
           |と非常に膨大でしたが、結局
           ↓
 ・2019年07月30日:拒絶査定           2019年:差止等請求訴訟
 ・2019年10月29日:拒絶査定不服審判請求          |この間の
           |この間、やりとりされた書面等も    |やりとりは
           | ・審判請求書1回          |裁判例検索
           | ・手続補正指令書          |でも不明
           | ・手続補正書1回          |
           | ・審尋1回             |
           | ・回答書1回            |
           | ・上申書8回            |
           |と膨大でした。            ↓
           ↓        2022年03月11日:判決言渡「原告敗訴
 ・2022年04月28日:審理終結通知書
           ↓
 ・2022年06月頃?:審決が出る予定です。

  婦人靴を取り扱っておられる業界の方は、この女性用ハイヒール靴の商標出願「
 商願2015-029921」の経過情報等について、ぜひご注目ください。

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第52回コラム(2022年4月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  飲食店などの店舗にて、ご商売をされておられる方は、多いのではと思いますが、
 もし、その店舗の内装や外装など「だけ」を真似され、店舗の名称は全く違うもので
 あった場合、どのような知的財産権を使えば良いでしょうか?そのような裁判例が実
 際にありました。
  その裁判例とは、「平成27年(ヨ)第22042号(判決文)」で、当時の新聞
 等にも取り上げられましたので、覚えておられる方もいるのではないでしょうか?(
 判決文の添付文書1添付文書2添付文書3をご参照ください。)
  この判決文では、その債権者(謂わば、原告)・債務者(謂わば、原告)間のやり
 とり等が詳しく書かれているのですが、不正競争として争ったため、事前に権利化し
 ていない分、裁判に時間・費用が余計にかかったとも言えます。

  この裁判例や諸外国の状況をふまえてかと思いますが、2020年4月1日から、
 店舗の内装や外装などを意匠権として事前に権利化できるようになりました。詳しく
 は、特許庁様の「改正意匠法に基づく新たな保護対象(画像・建築物・内装)の意匠
 登録事例について」や「内装の意匠登録事例」などを、ご覧くださればと思います。
  もし店舗の内装などが真似されそうと感じた際には、意匠権として事前に権利化し
 てはいかがでしょうか。

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第51回コラム(2022年3月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  連続して商標の話題となってしまいますが、先日、商標の類否について興味深い判
 決例が出ましたのでご紹介いたします。

  その裁判例とは、「令和2年(ワ)第1160号(判決文)」で、この原告の商標
 権は、判決文のPDF33ページに載っており、これに対する被告の標章や商品は、
 同じく判決文のPDF31、32ページに載っております。これを見て、みなさまは
 直感的にどう感じましたでしょうか?「似ている(類似)」or「似ていない(非類似
 )」であれば、どちらでしょうか?
  結論は、判決文のPDF1ページをご覧ください。以前の意匠権の裁判例でも述べ
 たように裁判では、ご自分が感じている通りに判断されない場合もあり、万全の準備
 でのぞまれてはと考えますと共に、
  商標の類否では、商標の各構成部分がそれを分離して観察(「分離観察」)して、
 商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断するこ
 とが許されることもあり得る旨、どうかご留意くださればと思います(判決文のPD
 F19~20ページにおける『(1)判断基準』を、是非ご参照ください)。

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第50回コラム(2022年2月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  以前、立体商標についてお話したのを覚えておられるでしょうか?その立体商標は
 パンの袋についている留め具で、登録番号は「商標登録第5858733号」です。
 また、その他の立体商標として、波消ブロック・しょうゆ入れ・菓子そのものなどを
 ご紹介いたしましたが、今回は、ランプシェードの立体商標をご紹介いたします。
  その立体商標の登録番号は「商標登録第5825191号」です。
 このランプシェードの立体商標については、侵害訴訟や無効審判、審決取消訴訟等、
 そして、最高裁への上告等も行われており、立体商標の商標権を取得した場合の権利
 行使や、それに対する防御などの参考になるのではと思います。以下、時系列に沿っ
 てご紹介いたします。

  ・2013年12月13日:商標出願
  ・2014年10月14日:拒絶査定
  ・2015年01月14日:不服審判請求
  ・2016年02月12日:登録
  ・2017年03月31日:無効審判請求  2017年     :侵害訴訟提起
  ・                 2018年12月27日:判決言渡「原告勝訴
  ・2019年05月  :審決「有効」           ※つまり権利者勝訴
  ・2019年06月12日:審決取消訴訟提起
  ・2019年11月26日:判決言渡「有効審決維持
  ・2019年12月10日:上告・上告受理申立
  ・2020年08月06日:上告棄却・上告受理申立却下

  ・2020年11月10日:別の無効審判請求
               ↓
           現在、特許庁にて審理中

  ランプシェードを取り扱っておられる業界の方は、このランプシェードの立体商標
  「商標登録第5825191号」の経過情報等について、ぜひご注目ください。

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第49回コラム(2022年1月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  以前、弊所コラムにて、河野大臣が「押印を省略しよう!」とおっしゃった件を覚
 えておられますでしょうか。詳細は、内閣府様のホームページにおきまして「河野内
 閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和2年11月13日」に記載され、この会見の約1カ
 月半後の2020年12月28日には特許庁様のホームページに、この点に言及なさ
 たページが設けられ、最終的には、2021年10月29日に更新された同ページ「
 特許庁関係手続における押印の見直し」では、押印が必要な特許庁様に対する申請手
 続は『797種』あったのですが、なんと『33種』まで減りました。迅速なご対応
 で、素晴らしく、大変ありがたく思います。詳しくは、特許庁様の「特許庁関係手続
 における押印の見直し」をご参照くださればと思います。
  ここで、押印を存続する手続『33種』は、偽造による被害が大きい手続であり、
 例えば、特許権等の譲渡による権利移転登録申請証明書の譲渡人(元々の権利者様)
 の押印などがあります。独占権たる特許権等が知らないうちに他者のものになれば、
 非常に影響が大きいことから、押印が残った(要件を厳しくした)と考えますし、個
 人的には、当然と感じています。

  ところで、特許権は、2者以上が共同で所有(共有)することも可能ですが、この
 ような「共有に係る特許権」について、特許法第七十三条第1項では『特許権が共有
 に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡・・・
 することができない。』と規定されておりますが、この同意(具体的な書類は「同意
 書」)について、上述した「特許庁関係手続における押印の見直し」では言及があり
 ませんでした。そこで先日、特許庁様へ問い合わせましたところ、やはり『他の共有
 者様による同意書への押印は、存続する』とのことでした。すごく納得しました。

  上述した押印を存続する手続には、本日2022年1月1日からは印鑑証明書等も
 必要となります。みなさまも、書類に押印が必要か否かや詳細についてお知りになり
 たい際には、まずは特許庁様にお問合せされてはと思います。

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第48回コラム(2021年12月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  今回は、裁判例アラカルトとしてまして、最近の裁判例で、ちょっと気になった意
 匠権の裁判例もを、ご紹介いたします。

  意匠権の裁判自体は、他の特許権や商標権等と比べて少ないのですが、意匠権は、
 見た目(外観)が似ているかどうかで主に争われますところ、「令和2年(ワ)第1
 4629号(判決文添付文書1)」では、添付文書1の16~18ページに、本件
 意匠と、被告意匠を対比した図等が載っています。これを見て、みなさまは直感的に
 どう感じましたでしょうか?「似ている(類似)」or「似ていない(非類似)」であ
 れば、どちらでしょうか?
  結論は、判決文の1ページをご覧ください。裁判では、ご自分が感じている通りに
 判断されない場合もあり、万全の準備でのぞまれてはと考えます。

  なお、この裁判は、第1審であり、もし知的財産高等裁判所に控訴された場合には
 結論が変わる可能性があります。ご注意くださればと思いますし、この裁判が確定等
 した際には、改めて、このコラムでご紹介できればと考えています。

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第47回コラム(2021年11月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  「インターネット版官報」というものをご存知でしょうか。
 これは、独立行政法人国立印刷局様が提供するインターネット版の「官報」であって
 直近30日分の官報情報(本紙、号外、政府調達等)は、全て無料で閲覧できます。
 閲覧の際は「インターネット版官報」の「ご利用に当たって」をご覧ください。
  また、そもそも「官報」とは、何でしょうか?「官報」とは、法令など政府情報の
 公的な伝達手段であり、現在では、内閣府が行政機関の休日を除き毎日発行していま
 す。詳しくは、独立行政法人国立印刷局様が運営する「官報利用者の声や「官報って
 何? キッズ官報」が参考になるかと思います。

  さて、この「インターネット版官報」には、法令以外に、コロナ禍等もあって、破
 産手続を開始した企業や、破産管財人の弁護士の方のお名前等も掲載されます。破産
 管財人の方は、債権者への配当を少しで増やすため、破産手続を開始した企業に残っ
 ている財産権の入札等を行いますが、財産権の1つである特許権などの知的財産権も
 当然、入札等にかけられます。この入札等で、意外な良い特許権などが、安く手に入
 るかも知れません。
  ぜひ一度「「インターネット版官報」を閲覧なさっては如何でしょうか。

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第46回コラム(2021年10月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  みなさまは「マドプロ」というものを、ご存知でしょうか。正式な名称は「マドリ
 ッド協定議定書(PROTOCOL RELATING TO THE MADRID AGREEMENT CONCER
 NING THE INTERNATIONAL REGISTRATION OF MARKS)」と言います。この「
 マドプロ」は、もし複数の外国で商標権を取得したい場合に、1カ国ずつ出願する方
 法と比べて有効な方法で、ぜひ選択肢の1つに入れてくださればと思います。この「
 マドプロ」の概要につきましては、特許庁様の『商標の国際登録制度(マドリッド制度
 )について〔出願実務〕(令和元年度知的財産権制度説明会(実務者向け)テキスト)
 の『第1章 マドリッド協定議定書に基づく国際登録出願の概要等をご覧ください。

  ところで、前回お話した、中国において商標権を取得する場合にも、この「マドプ
 ロ」は使えますが、「マドプロ」で中国の商標権を取得しても、実は権利行使の際に
 必要な『登録証』が発行されません。そうしますと、「マドプロ」で取得した中国の
 商標権にて権利行使できないのでしょうか?
  いえいえ、そんなことは当然ありません。中国でも『登録証』の再発行が可能で
 所定の費用(中国商標局への料金・中国現地代理人への費用)はかかりますが、「マ
 ドプロ」で取得した中国の商標権にて権利行使をする場合には、この再発行をするこ
 とで、『登録証』を取り寄せれば、権利行使できます(中国商標局への料金の詳細に
 つきましては、INPIT様(独立行政法人工業所有権情報・研修館様)の「新興国
 等知財情報データバンク」における『中国における商標関連の料金表』中の表で、上
 から5番目の「商標登録証の再発行申請」をご覧ください)。
  したがって、「マドプロ」で取得した中国の商標権にて権利行使をする際には、ま
 ず『登録証』を取り寄せれば大丈夫です。

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第45回コラム(2021年9月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  前回は、特許証や、商標などの登録証を紛失してしまった等の場合、再交付の仕方
 などについてお話した際、「日本においては、『特許証』や『登録証』が手元になく
 とも、権利者であることを主張できなくなるわけではありませんので、もし『特許証
 』などを紛失等されても、独占権である特許権などの本質は変わりません。」と述べ
 ましたが、お隣の中国ではちょっと違うようです。

  更に、中国においては、特許と商標で権利行使の際に、必要なものが異なり、
 <1>特許権の場合
  特許権の権利行使に必要なものは、以下①、②の何れかとなります。
   ①『特許証』および『最新の年金納付の受領書』の提示 ※ここで『特許証』と
     は、「紙の特許証」原本そのものです。
   ②『登録原簿のコピー』の提示

 <2>商標権の場合
  一方、商標権の権利行使に必要なものは、以下①のみとなっており、特許権より更
  に厳しくなっています。
   ①『登録証』の提示、および、『登録証のコピー』の提出 ※ここでも『登録証
     』とは、「紙の登録証」原本そのものです。

  つまり、商標権の場合、中国では『登録証』原本そのものが手元になければ、権利
 行使することは出来ません。よって、中国の商標権の『登録証』は紛失等しないよう
 お気を付けください。

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第44回コラム(2021年8月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  特許出願が審査を経て、独占権である特許権を取得できれば喜ばしいことです。
 特許権を取得した際には、特許庁から『特許証(特許庁様のイメージ画像)』が届き
 ます。また、特許以外で、商標権などの場合『登録証』が届くこととなります。
  この『特許証』や『登録証』については特許庁様の「特許(登録)証について」と
 のページにてご説明されておられるように、
 「特許(登録)証」は、権利として登録された証ですが、
  ・権利者の手元に特許(登録)証がない場合でも
   権利者であることを主張できなくなるわけではありません。
  ・例えば、特許(登録)証を譲渡すれば権利も譲渡されるものではありません。
  ・特許証は、権利情報が設定登録時点のもので交付されますので、
   最新の登録内容を確認するのであれば、
   「登録原簿」の閲覧をする必要があります。
  ・様々な原簿についての詳細は原簿についてをご覧ください。
 とのことです。
  日本においては、『特許証』や『登録証』が手元になくとも、権利者であることを
 主張できなくなるわけではありませんので、もし『特許証』などを紛失等されても、
 独占権である特許権などの本質は変わりません。
  ただ、苦労なさって取得した特許権の『特許証』などは、誇らしいですし、やはり
 手元におきたいのが人情かも知れません。

  そこで、紛失したり、汚れてしまったり、破れてしまった『特許証』などをもう一
 度、新しくしたい方は、『特許証』などの「再交付請求」を検討されては如何でしょ
 うか。詳細は、特許庁様の「特許(登録)証の再交付請求について」をご覧いただけ
 ればと思いますが、
  ・料金は、1権利者につき4,600円
  ・再交付請求書の提出から、約3~4週間で新しい『特許証』などを発送
 とのことで、
 ぜひ一度「特許(登録)証の再交付請求について」を確認されては如何でしょうか。

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第43回コラム(2021年7月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  知財に関わる中で「気になるあの特許、今どんな状況かなぁ」と知りたくなること
 はないでしょうか。世界の各国等の特許の状況を調べるサイトのうち、主要な国・地
 域として、前々回は【1】日本をご紹介し、前回は【2】ヨーロッパを紹介しました
 が、今回は【3】アメリカをご紹介いたします。

 【3】アメリカ
  アメリカの特許についても、状況を調べるサイトは複数ありますが、アメリカの米
 国特許商標庁が運営し、Office Action(日本の拒絶理由通知書に相当するもの)のW
 ordファイルがダウンロードできる「Patent Center」がお勧めです。例えば、この「
 Patent Center」のトップページに気になる特許の出願番号等を入力して、その特許
 の『Application Data(出願情報)』のページを開き(例えば、上述の特許2628404
 を1つの基礎とした米国出願08/223739(固定URLはありません)であれば、
 トップページに出願番号を入力して、こんな『Application Data』のページになりま
 す)。開いたこの『Application Data』の左端の上から2番目のタブの
 『Documents & Transactions』のタブを押して開いたページで、更に左に寄った2
 つタブのうち、右のタブを押すことで、その特許が、権利化されたか?や、権利化さ
 れたのであれば、日本の特許庁とどのようなやりとりをしたか?等がわかる『Transactio
 ns(処理)』のページが表示されます(例えば、上述の米国出願08/223739であれば
 、こんな『Transactions』のページです)。
  上述の米国出願08/223739もかなり以前に登録されているので『Transactions』に
 変化はありませんが、また別の権利化前の特許について、例えば、「Office Action
 Counted, Not Yet Mailed - 01/08/2020(Office Actionがカウントされたが、20
 20年1月8日現在、まだメールされていない)』との、担当審査官はOffice Action
 を作成したものの、現地代理人にはまだ届いていない等の非常に細かい状況もわかり
 ます。
  なお、日本の「J-PlatPat」の経過情報では、新たに拒絶理由通知書が発送された等
 は、その発送等された日の翌開庁日の午前9時頃以降に更新されますが、アメリカの
 「Patent Center」では、メール等される日の午前5時など、夜中や朝方でも更新さ
 れるようです。

 ぜひ一度「Patent Center」を覗いてみては如何でしょうか。

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第42回コラム(2021年6月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  知財に関わる中で「気になるあの特許、今どんな状況かなぁ」と知りたくなること
 はないでしょうか。世界の各国等の特許の状況を調べるサイトのうち、主要な国・地
 域として、前回は【1】日本をご紹介しましたが、今回は【2】ヨーロッパをご紹介
 いたします。次回は【3】アメリカの予定です。

 【2】ヨーロッパ
  ヨーロッパの特許について、状況を調べるサイトは複数ありますが、ヨーロッパの
 欧州特許庁自体が運営し、欧州特許出願の出願維持年金の納付状況等も確認できる「
 Espacenet」がお勧めです。例えば、この「Espacenet」のSmartSearch等に気にな
 る特許の特許番号等を入力して、その特許の『書誌事項』のページを開いて(例えば
 、上述の特許2628404を1つの基礎とした欧州特許EP0482648であれば、
 SmartSearchに特許番号を入力してこんな『書誌事項』のページになります)、
 開いたこの『書誌事項』の上部中央のうち、『Register』のリンクを押すことで、そ
 の特許が、権利前か?や、出願維持年金を納付したか?等がわかる『European Pate
 nt Register(欧州特許の登録簿)』のページが表示されます(例えば、上述の欧州
 特許EP0482648であれば、こんな『European Patent Register』のページです)。
 
  上述のEP0482648も、かなり以前に登録されているので、『European Patent Re
 gister』に変化はありませんが、また別の権利化前の特許について現地代理人を介し
 て手続をした数日後には、この「Espacenet」の『European Patent Register』にア
 ップされています。遠いドイツのミュンヘンにある欧州特許庁の登録簿が、無料で確
 認できます。すごいです。

 ぜひ一度「Espacenet」を覗いてみては如何でしょうか。

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第41回コラム(2021年5月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  知財に関わる中で「気になるあの特許、今どんな状況かなぁ」と知りたくなること
 はないでしょうか。今回は、世界の各国等の特許の状況を調べるサイトのうち、主要
 な国・地域として、今回は【1】日本をご紹介し、次回は【2】ヨーロッパを、次々
 回は【3】アメリカをご紹介します。

 【1】日本
  日本の特許については、このコラムでも以前に何回かお伝えした「J-PlatPat」にて
 、気になる特許の公開番号や特許番号、キーワード等から、その特許の『文献表示』
 のページを開き(例えば、ある半導体に関する特許2628404であれば、こんな『
 文献表示』のページになります)、開いたこの『文献表示』の右上に並んだボタン中
 『経過情報』のボタンを押すことで、その特許が、権利化されたか?や、権利化され
 たのであれば、日本の特許庁とどのようなやりとりをしたか?、権利化した後、現在
 も存続しているか?等がわかります(例えば、上述の特許2628404であれば、こんな
 『経過情報』のページです)。
  上述の特許2628404は、かなり以前に登録されているので、今後『経過情報』に変
 化はありませんが、また別の権利化前の特許について、オンラインにて補正書や意見
 書等を提出した翌日等には、この「J-PlatPat」の『経過情報』にアップされています
 。すごいです。

 ぜひ一度「J-PlatPat」を覗いてみては如何でしょうか。

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第40回コラム(2021年4月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  今まで、特許や商標・意匠をはじめ、知財についてコラムに書きましたが、文章等
 では、「いまいち、わかり難いなぁ~」という方もおられたのではと思います。
  そのような方は、ぜひ知財の漫画をお読みいただいては如何でしょうか。

 日本弁理士会にて作成された『漫画「閃きの番人」』では、実際におこりそうな事例
 を挙げながら、漫画にて、わかり易く説明されています。
  詳しくご紹介しますと、

  ・第1話:弁理士ジョージをよろしく 公知と先使用権 (前編) (後編)

  ・第2話:哀しみが生んだ母の発明 非弁行為と冒認出願 (前編) (後編)

  ・第3話:商標権が守った夢と絆 商標権と不正競争防止法 (前編) (後編)

  ・第4話:ジョージの夢に咲く華 グローバル化する製造業と意匠権 (前編) (後編)

  ・第5話:特許証に刻まれた永遠の愛 特許出願手続き (前編) (後編)

  ・第6話:逆転のIT社長 ソフトウェア特許 (前編) (後編)

 の全6話です。ぜひご一読ください。
 また、各話ごとにアンケートもついており、こちらもご回答くだされば幸いです。
  どうぞよろしくお願いいたします。

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第39回コラム(2021年3月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  2005年に東京高等裁判所にて和解となった「青色ダイオード訴訟」等により、
 就業規則等に「職務発明」に関する規則をお入れになられた企業等も多かったのでは
 と思いますが、その10年後の平成27年(2015年)特許法等改正によって「職
 務発明」に新たに『原始取得』に関する条項が加わっています。
  詳細につきましては、特許庁様ホームページの『職務発明制度の概要』に関する下
 記ページ・資料をご覧いただければと思います。
  ・職務発明制度の概要
  ・中小企業のための職務発明規程導入について
  この『原始取得』とは、要するに「職務発明が完成した時から、企業様等に特許を
 受ける権利を、帰属させる」ことですが、この『原始取得』が最も意味を持つのは、
 他の会社等と共同で職務発明を行った場合と考えます。
  この共同で職務発明を行った場合については、特許庁様ホームページでも、「共同
 研究などの場面において特許を受ける権利が共有に係るケースがあるが、この場合、
 各共有者は、他の共有者の同意を得ない限り当該特許を受ける権利の持分を譲渡する
 ことができない(第33条第3項)。そのため、使用者等にとっては、仮にあらかじ
 め契約等により職務発明に係る特許を受ける権利を自らの従業者等から承継する旨定
 めていたとしても、共同研究によって特許を受ける権利が他社等の従業者等との共有
 に係る場合には、このあらかじめ定めた契約等だけでは足りず、当該他社等の発明者
 たる従業者等の同意を別途得ない限り、自らの従業者等の特許を受ける権利の持
 分すら自らに承継できないという問題が生じている。」とのことです。(詳細につ
 きましては下記資料3ページ(2)①をご覧いただければと思います。
  ・平成27年度法改正解説

  このような問題が生じないために、企業等におかれましては、就業規則等に「職務
 発明」に関する規則を、特許庁様ホームページの「ひな形」の第4条『職務発明につ
 いては、その発明が完成した時に、会社が特許を受ける権利を取得する。』をご参考
 にされたり、『知的財産総合支援窓口』様をご利用いただく等にて、もし就業規則等
 に「職務発明」に関する規則を加えたり、就業規則等を変更なさる際には、ぜひ明ら
 かに『原始取得』となる文面にされてはと思います。

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第38回コラム(2021年2月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  みなさまは、昨年2020年に、河野大臣が「押印を省略しよう!」とおっしゃっ
 たのを覚えておられますでしょうか。詳細は、内閣府様のホームページにおきまして
 「河野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和2年11月13日」に記載されています。
  この会見の約1カ月半後の2020年12月28日に、特許庁様のホームページに
 おきまして「特許庁関係手続における押印の見直しについて」とアップなされ、非常
 に素早いご対応で、素晴らしく、大変ありがたいです。
  詳しくは、特許庁様の上記ページをご参照くださればと思いますが、特許庁様にお
 ける押印省略は、押印が必要な約800種の特許庁様に対する申請手続のうち、約7
 00種の押印を省略するというものです。
 逆に、押印を残すものとしては、
  ・出願人名義変更
  ・出願人等の氏名・住所変更
  ・権利の移転登録に関する手続
  ・権利者の氏名・住所変更
 等々であり、これらは、ご出願人様や権利者様が知らないうちに、他人の出願や権利
 になっていた等、偽造の被害が大きいものに限られています。

  一方、出願や権利の状態が変わるものとして、例えば、『出願の取下げ』という手
 続きがありますが、特許法第9条には、念を入れて「特別の授権を得なければ」代理
 人は、出願の取下げができない旨が規定されています。
  よって、『出願の取下げ』は、事前に包括的な委任状等で委任いいただいておくか
 、または、『出願の取下げ』についての個別の委任状に、以前はお客様の押印をいた
 だいたものを、記録が残る郵便(簡易書留等)にて特許庁様へ郵送していましたが、
 実は、この『出願の取下げ』についての個別の委任状への押印も省略の対象でした。
 ただし、お客様の押印省略以外は、以前と全く同じで郵送等も行い、個別の委任状に
 おける日付には、実際にお客様と代理人との間で同意があった日の記入が必須です。

  今まで押印が必要だった書類は、まずは特許庁様にお聞きしてみてはと思います。

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第37回コラム(2021年1月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  前回は「オンライン面接システムを用いた面接(謂わば、Web面接)」について
 ご紹介いたしましたが、実際に「Web面接」をやってみますと、実物を見ていただ
 くために、事前に実物を東京の特許庁様へお送りするなど、対面での面接より時間や
 手間がかかり、拒絶理由通知等への応答期間(60日等)が短いと感じるかも知れま
 せん。
  そのような場合は、特許印紙代は2100円(期間徒過後は51000円)かかる
 ものの、以前とは異なり、国内居住者も、合理的な理由なしに、最長「2ヵ月」延長
 できることから、ぜひ「応答期間の延長」をご検討されてはと思います。
   この「応答期間の延長」の詳細は、
 特許出願及び商標登録出願における拒絶理由通知の応答期間の延長に関する運用の変
 更についてに紹介されており、これらの期間延長請求書のひな型は、以下をご参照く
 ださい。
 (1)応答期間内に行う期間延長請求
  特許 [(PDF:31KB)] [(ワード:23KB)]
  商標 [(PDF:32KB)] [(ワード:23KB)]
 (2)応答期間経過後に行う期間延長請求
  特許 [(PDF:32KB)] [(ワード:24KB)]
  商標 [(PDF:33KB)] [(ワード:24KB)]

  尚、この運用は特許と商標のみで、2021年1月時点において、意匠の合理的な
 理由なしの延長だけは、まだ認められておらず、今後、意匠も運用開始『予定』との
 ことです。ご注意ください。

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第36回コラム(2020年12月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
 「オンライン面接システムを用いた面接」をご存知でしょうか?Webアプリケーシ
 ョンを利用したもので、謂わば「Web面接」と言えます。「Web面接」の詳細は
  オンライン面接システムを用いた面接について
  テレビ面接システムの概要紹介
  テレビ面接システムの主要機能紹介
 に紹介されています。
  実際に、この「Web面接」をしてみたのですが、担当審査官の方へ、「Web面
 接」を希望する旨や、候補の日時と、参加される方のメールアドレスを伝えると、
  ◎コロナ禍であっても、全く支障がない!
  ◎パソコン、インターネット、ウェブカメラ、マイクとスピーカーをお持ちなら、
   利用するWebアプリケーションは、無料!
  ◎当然、東京の特許庁など面接の会場等まで行く時間・交通費が節約できる!
  ◎事前に、実物を提出することもでき、Web越しに実物をまじえて面接すれば、
   対面での面接と遜色なし!
 等々、非常に良い制度です。

  この他のメリットとして、審査官の方に、実物の説明をし苦労した点などをお話す
 ることで、「ここをこう書いては如何でしょうか」等のヒントを下さったりする場合
 があります。なお、実物の事前提出につきましては、
 「面接ガイドライン【特許審査編】全文」 の5.4等をご参照ください。
 コロナ禍で拒絶理由通知を受けたときは、ぜひ「Web面接」のご一考を。

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第35回コラム(2020年11月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  他社の特許出願で「このまま特許権になれば、製造・販売している商品が、その特
 許を侵害してしまうかも・・・」というご経験はないでしょうか?このような場合、
 特許法には、異議申立や無効審判という制度が規定され、他社の特許権を取り消した
 り、無効にしたい際に利用可能となっています。
  しかし、これら異議申立や無効審判は、裁判の第1審に相当するほど慎重な手続き
 となってますが、逆に、労力・費用等の負担も大きくなります。そのため、もっと簡
 便で少ない負担で、他社の特許出願の権利化を阻止したい方には、「情報提供」とい
 う制度をご紹介し、実際に手続きをしています。
  この「情報提供」は、特許庁様により「情報提供制度について」とのページで概要
 等が示され、詳細については、「情報提供を行う際の手続」とのページにて説明され
 ています。
  「情報提供」のメリットは、負担が少ない等と共に、完全に「匿名」にて行える点
 です。一方、「情報提供」のデメリットは、提供した情報について、担当の審査官が
 参照・採用等する義務はない(特許法等による法的拘束力はない)ため、せっかく提
 出しても、担当の審査官が全く採用等してくれない場合もあります。
  ただ、担当の審査官の方に匿名で電話等をして、提供した情報について話をしたこ
 とがありますが、採用等するかは別として、提供した情報に必ず目を通しているよう
 で、この匿名の電話等でも、担当の審査官の方の理解が深まるようでした。
  もし他社の気になる特許出願がある場合には、一度「情報提供」を検討されては、
 如何でしょうか。

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第34回コラム(2020年10月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  パンの袋についている留め具をご存知でしょうか。この留め具、実は立体商標とし
 て登録されています。
  この立体商標、登録番号は「商標登録第5858733号」で、詳細は、その登録
 公報や経過情報等をご覧いただければと思いますが、この留め具を、もし特許として
 出願・権利化した場合、その権利期間は基本的に「出願から20年」となるものの、
 この「商標登録第5858733号」のように、商標として出願・権利化した場合、
 登録から10年ごとに更新することで、半永久的に、工業製品でもある留め具を保護
 できます。
  このような立体商標による保護は、この留め具だけでなく、
   ◎波消ブロック:商標登録第4639603号
   ◎しょうゆ入れ:商標登録第6031041号
   ◎菓子そのもの:商標登録第6031305号
 など、意外なものが、立体商標として登録されています。
  なお、これらの工業製品は、何でも立体商標として保護される訳ではなく、その工
 業製品が周知であること等が必要です。
  ただ、半永久的に保護できるかも知れないことは魅力であり、御社の工業製品が、
 もし周知であれば、立体商標としての保護を検討されては如何でしょうか?

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第33回コラム(2020年9月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  新しい製品を開発し、そのブランドについて商標権まで取ったものの、いざ内容証
 明を送ったり、自ら裁判をするのは、費用や時間が多くかかりそうだし、弁理士や弁
 護士に相談するのも少し気が引ける方もいらっしゃるのではないでしょうか?
  そのような場合は、商標法違反として、警察などに相談・通報することを検討され
 ては如何でしょうか?
  <警察庁の相談窓口>
   https://www.npa.go.jp/cybersafety/Homepage/homepage8.html
  <都道府県警察本部のサイバー犯罪相談窓口等一覧>
   http://www.npa.go.jp/cyber/soudan.htm

  この相談・通報によって、権利者自らは動かずとも警察に動いてもらい、警察が捜
 査・逮捕して事件を検察庁に送った(送致した)後、検察官が起訴すれば裁判となり
 ますが、この裁判において権利者側にかかる費用はありません。また現実に、ネット
 等の記事では、有名ブランドの偽物を販売目的で所持したなど商標法違反の疑いで逮
 捕されたというニュースが、2017年7月は、この1カ月だけで数件ありました。
  なお、このような相談・通報によって、警察や検察庁が動けるのは、商標だけでな
 く、特許・実用新案・意匠でも同様ですが、特許等の場合、本当に侵害かどうか?は
 優秀な裁判官が何年もかけて判断しなくては結論が出ないため、現実に逮捕されるの
 は、商標が主のようです。
  ただし、これは裏を返すと、他人の商標などのマネをすることは、商標法等の違反
 で逮捕され得ることを意味しますので、十分に留意する必要があります。

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第32回コラム(2020年8月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  商標権は取っていないけど、ブランドが真似された!ということはありませんか?
 そのような場合は、ぜひ不正競争防止法による保護もご検討ください。この不正競争
 防止法について説明したサイトは、いくつかありますが、私は経済産業省の知的財産
 政策室様の『不正競争防止法の概要』が一番だと思います。
  この概要の16~20ページでは、ブランドが真似された場合について、どのよう
 な『条件』が揃えば差止等が出来るかについて詳しく説明していますが、説明された
 『条件』のうち、特にこの概要で参考にして頂きたいのは、
  ・周知性(=需要者の間に広く認識されているものを言い、全国的に知られている
        必要はなく、一地方であっても足ります)
  ・著名性(=単に広く認識されているだけでは足りず(「周知性」より上で)、全
        国的に知られていることが必要です)
 の2つです。
  私も「周知性」や「著名性」と言われても、今まではピンと来なかったのですが、
 この概要の20ページには、過去に裁判で「周知性」や「著名性」があると認められ
 た具体例として、
  ・周知性ありの例:VOGUE、BERETTA、マイクロダイエット、MICRODIET
  ・著名性ありの例:Budweiser、PETER RABBIT、三菱、三菱商標(スリーダイヤのマーク)
 等々が数多く掲載されており、非常に参考になりました。もし不正競争防止法でブラ
 ンドを保護したいとお考えの場合は、上述した具体例とご自身のブランドを比べるこ
 とが、1つの目安になると思います。是非一度『不正競争防止法の概要』をご参照く
 ださい。

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第31回コラム(2020年7月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  第28回に引き続き、商標についてです。使いたい商品名・サービス名が既に他者
 の登録商標等となっており、更に第28回でお話した『類似群コード』も同じであれ
 ば、どうしますか?基本的には、その商品名等を使わずに別のネーミングを考えた方
 が無難です。
  しかし、既にある程度のお金や時間をかけて準備を進めてしまった場合もあるでし
 ょう。そのような場合には、特許庁の商標審査基準の
 「第4条第1項第11号(先願に係る他人の登録商標)」中、下部中央のページ番号「9
 6~98ページ」の『11.商品又は役務の類否判断について』を確認されては如何で
 しょうか?
  ここには、使いたい商品等が、他の商品等と類似しているかは、『例えば、次の基
 準を総合的に考慮するものとする。この場合には、原則として、類似商品・役務審査
 基準によるものとする。』と記載され、単純に『類似群コード』が同じか?とは述べ
 られていません。
  私自身の経験ですが、無料の検索サイトで調査すると、使いたい商品名に類似した
 他者商標が、同じ『類似群コード』で登録になっていたのですが、商標出願と同時に
  ・使いたい商品自体を詳しく説明する資料
  ・その商品の『生産部門や販売部門、原材料及び品質、用途、需要者の範囲、完成
   品と部品との関係にあるか等』を述べた書類(=「上申書」)
 を特許庁へ別送することで、その商標出願が登録になったことがありました。
  使いたい商品名等のためにかけたお金や時間が大きく、簡単にあきらめられない場
 合には、是非ご一考ください。

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第30回コラム(2020年6月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  2020年5月25日付で、緊急事態宣言が解除され、今後、「新型コロナウイル
 ス感染症対策の基本対処方針(新型コロナウイルス感染症対策本部決定)」に基づき
 、感染拡大の防止と社会経済活動の維持の両立を行っていくため、特許庁として、2
 020年4月13日より閉鎖されていた特許庁正門が、2020年6月1日より開門
 されることとなりました。詳細は、下記URLをご覧ください。
  ○新型コロナウイルス感染症関連ページ
   https://www.jpo.go.jp/news/koho/info/covid19_shutsugan.html

  また、人の接触を避ける観点から、出願等は、引き続き電子出願・郵送による出願
 等にご協力ください、とのことです。
  新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、各種手続を所定期限内に行うことが困
 難となった方に対しては、下記URLのとおり柔軟な対応を行うなどの措置を講じて
 おられます。詳細は、下記URLをご覧ください。
  ○新型コロナウイルス感染症により影響を受けた手続の取り扱いについて
   https://www.jpo.go.jp/news/koho/info/covid19_tetsuzuki_eikyo.html
  ○新型コロナウイルス感染症により影響を受けた手続における「その責めに帰する
   ことができない理由」及び「正当な理由」による救済について(4月24日追加)
   https://www.jpo.go.jp/news/koho/saigai/covid19_tetsuzuki_kyusai.html

  特許等もふくめ業務を通常に戻す必要がある一方で、第2波など、まだ余談を許さ
 ない状況です。引き続き、何か必要な情報があれば、お伝えしていきます。

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第29回コラム(2020年5月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  新型コロナウイルスのため、売上や資金繰りなど、気になると思います。私自身も
 気になります。こんな時は、必要な情報を知ることが大切だと考えます。そこで、各
 地域の経済産業局様からご紹介いただいたサイトやお知らせを以下に抜粋します。
---------------<ここから>------------------
◇新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業者の皆様へ
  新型コロナウイルスの感染が広がる中、観光客の減少や部品の調達・供給等の停滞
 など観光関連産業や製造業など影響が長期化していることを踏まえ、政府は、個人事
 業主を含む中小・小規模事業者の資金繰り対策などを盛り込んだ事業者の皆様に緊急
 対応策を発表しております。
  ○新型コロナウイルス感染症関連ページ
   https://www.meti.go.jp/covid-19/index.html
  ○パンフレット
   https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf

◇特許庁「新型コロナウイルス感染症拡大に伴う対応等について」
  今般の緊急事態宣言の発出を踏まえ、当面の間、出願の受付等については、当面の
 間、原則行わず、電子出願(電子証明書をお持ちの方)又は郵送(書留、配達記録を
 推奨)による出願等のみ可能とします。ご理解・ご協力をお願いします。
  https://www.jpo.go.jp/news/koho/info/covid19_shutsugan.html

◇特許庁「新型コロナウイルス感染症により影響を受けた手続の取り扱いについて」
  特許、実用新案、意匠及び商標に関する出願等の手続について、新型コロナウイル
 ス感染症による影響を受けた方にお知らせいたします。
  http://mm-enquete-cnt.meti.go.jp/mail/u/l?p=59Oqlv_icdvIOiiiY
---------------<ここまで>------------------

  また、2020年4月中に、特許の審査に関し、特許庁の職員の方と電話やFAX
 でのやりとりをしたのですが、このような状況にも関わらず、通常通り大変丁寧にご
 対応いただきました。本当にありがたく思います。
  何か必要な情報があれば、お伝えしていきます。

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第28回コラム(2020年4月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  使いたい商品名・サービス名が既に他者の登録商標になっていたらどうしますか?
 先月の第27回は、商標権の類似?非類似?をお話しましたが、無料の検索サイト「
 J-PlatPat」の商標を検索するメニュー中、例えば、検索項目を「称呼(単
 純文字列検索)」とした検索等の検索結果から、他者の登録商標や出願中の商標等が
 わかりますが、この検索結果で既に他者の登録商標等になっているものの、それでも
 その商品名等を使いたい場合、どうしますか?
  そのような場合は、『類似群コード』を調べましょう。
 前回もお話したように、たとえ登録商標等(=マーク)が「同一・類似」でも商品等
 が「非類似」であれば、使いたい商品名等は権利化できます。特許庁では、そのよう
 な商品等の「同一・類似」か「非類似」かを『類似群コード』で示されており、例え
 ば、前回も例示した登録商標であれば、下から2、3行目に【類似群コード(参考情
 報)】第12類『09B01、09F02、09F04、11A01、12A05、
 12A06』と記載されているうち「09B01」や「09F02」等が『類似群コ
 ード』です。
  一方、ご自分の使いたい商品等の『類似群コード』については「J-PlatPa
 t」の商品・役務名検索」で調べられ、例えば、この商品・役務名検索で、商品・役
 務名の欄に「エンジン」と入力すると300件以上がヒットし、そのうち「エンジン
 の部品」等は、上述した「09B01」と同じ『類似群コード』ですが、「エンジン
 オイル」は「05B01」で『類似群コード』が異なります。
  つまり、ご自分の使いたい商品等の『類似群コード』と、「09B01」等の『類
 似群コード』と、が同じでなければ、『ひとまずは』他者の登録商標の侵害にはなっ
 ていません。なお、検索したその時は、他者の登録商標にはなっていなくとも、その
 あと誰かがその商品名等を商標出願する可能性があり、定期的に検索サイトで調べる
 か、商標出願をされた方が無難です。

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第27回コラム(2020年3月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  2年程前、第6回コラムの記事にて、特許裁判の「勝ち・負け」について書いたの
 ですが、商標裁判において、どうやって「勝ち・負け」が決まるか?について、詳し
 くご存知でない場合があるようで、今回は、商標裁判における「裁判官判断の目安」
 を述べます。
  商標裁判においては、特許庁の審査を経て登録された商標権の内容は「商標公報」
 を見ればわかるのですが、例えば、ある商標公報について、裁判官は、【登録商標】
 (=マーク)だけでなく、【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】等も
 見て、
  ・商標公報のマークvs相手が使ったマーク
  ・商標公報の商品等vs相手が使った商品等
 を判断の目安にしています。
  これらマークと商品等のうち、
  <1>マークは「同一」で商品等も「同一」の場合、侵害
  <2>マークは「類似」で商品等は「同一」の場合、侵害
  <3>マークは「同一」で商品等は「類似」の場合、侵害
  <4>マークは「類似」で商品等も「類似」の場合、侵害
 と裁判官は判断するのですが、
  <5>マークは「同一」だが商品等が「非類似」の場合、侵害?・非侵害?いずれ
 でしょうか?これら<1>~<5>などの場合を、別表にまとめました。
  つまり、商標権とは、マークと商品等がセットで1つの権利となっており、例えば
 同じマークを使っても(使われても)商品等が非類似であれば侵害とはなりません。
  商標権を既にお持ちの方も、どの場面で侵害と言えるか?、ご自分のブランド・商
 品を商標権できちんと守れるか?を確認くださればと思います。

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第26回コラム(2020年2月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  このHPを閲覧されている方は、商売や、特許などの知的財産(知財)に何かしら
 関心がある方だと思います。そのような方が思っている本音は「特許などの知財にな
 んぼ使って、なんぼ儲かるの?」だと思います。今回は、その実際の数字を、いくつ
 かの会社を例にお話します。
  まず1社目のA社は、2010年に纏められていたデータからで、このA社は、資
 本金2050万円、従業員数178名、主な事業内容は「外装建材等の製造・販売」
 であり、権利所有件数は「特許38件、実用新案24件、意匠12件、商標56件」
 です。A社は、1年間に「2000万円」の知財関係費(X)を使って、知財により
 保護された製品の売上(Y)が「5億7000万円」でした。よって費用対効果(Y
 /X)は、5億7000万円÷2000万円=28.5、つまり、A社は、知財に『
 1万円』使ったら『28.5万円』儲かったということです。
  次の2社目のB社は、私が2017年に調べたのですが、このB社は、資本金20
 00万円、2017年当時の従業員数163名、主な事業内容は「太陽光発電システ
 ム等の設計・施工」であり、その当時の権利所有件数は「特許7件、実用新案0件、
 意匠0件、商標12件」です。B社は、1年間に平均「210万円」の知財関係費(
 X)を使って、知財により保護された製品の1年間の平均売上(Y)が「74億円」
 でした。よって費用対効果(Y/X)は、74億円÷210万円≒3523、つまり
 、B社は、知財に『1万円』使ったら『3523万円』儲かったということです。す
 Bごいです。また社のご担当者様は「特許等は、件数ではなくで、いかに権利範囲を
 広く取得するか?かが大事」とおっしゃっていました。
  これら費用対効果(Y/X)の数字は、おおむね20~3500の間に入るようで
 すが、知財だけのおかげとは言えず、商品がヒットするかは、商品の良さ・売り方・
 時代・法制度・運などの要素が大きいと思います。ただ、やはり事実としてA、B社
 は存在することから、今回の数字を1つの参考に知財を検討くださればと思います。

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第25回コラム(2020年1月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  時折、無関係の「商標出願」を繰り返す企業・個人のことが、TV番組やネット記
 事で取り上げられています。このような企業・個人については、第18回でもお伝え
 した特許庁HPの「自らの商標を他人に商標登録出願されている皆様へ(ご注意)
 にて、昨年の5月に注意喚起されています。
  しかし、TV番組やネット記事では非常に曖昧な報道の仕方をしており、また、ネ
 ット記事で一般の方が書き込むコメント欄を拝見しますと、
  <1>商標「出願」を商標「登録」と勘違いをされている
  <2>商標「出願」時点では特許庁の費用が無料?等お金を払うタイミングが曖昧
 などの場合が見受けられますので、この<1>、<2>について少しご説明します。

 <1>について
  上記URLの特許庁HPでも記載されているように、あくまでも商標「出願」がな
 されただけであり、出願した商標が全て登録される訳ではありません。つまり、商標
 「出願」≠商標「登録」です。そして、商標は「登録」されなければ「商標権」が生
 じず、裁判を起こされる心配はありません。
  また、この特許庁HPでは、出願された商標が、出願人の業務に係る商品・役務に
 ついて使用するものでない場合や、他人の著名な商標の先取りとなるような出願や第
 三者の公益的なマークの出願である等の場合には、商標を登録しない旨も記載されて
 います。

 <2>について
  現在の商標法では、商標出願の際に「費用を納付しないなら、審査はせず、絶対に
 登録にはならない」ようになっているのですが、救済措置として、「うっかり納付し
 忘れた」等のために「納付、忘れていますよ」などの手紙(補正指令書)が特許庁か
 ら来て、所定期間(約6ヶ月ほど)は納付を待ってくれる制度となっています。
  ところが、この「うっかり」を救済する制度を悪用して、ある企業・個人が、毎回
 費用を納付しないのに、その所定期間は「ツバをつけた」状態を保っているのです。
 ひどいなと思います。ただ、TV番組でも全国放送であれだけ取り上げられ、その後
 商標法の改正がなされました。
 詳細は、特許庁HPの「商標登録出願の分割要件が強化されます」をご覧ください。

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第24回コラム(2019年12月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  最も文字数が少ない特許権は、何文字だと思いますか?一般的に「文字数が少ない
 ほど権利範囲は広い」と考えられ、従来は17文字で登録された特許権がありました
 が、約3年前「10文字」で表現された特許権が登録になりました。
  その特許請求の範囲は「繊維状活性炭多重織物」のみであり、これは、この特許権
 の発明名称と全く同じです。(詳しい内容は、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat
 )の特許6020346にて、参照できます。)
  ちなみに、この特許権は、出願当初「嵩密度が0.02~0.19g/m、乾燥
 目付が60~250g/mであることを特徴とする繊維状活性炭多重織物」だった
 のですが、審査請求と同時に、出願人自ら「繊維状活性炭多重織物」に補正し、権利
 範囲が広くなりました。当然に特許庁から拒絶理由通知書が来たのですが、特許請求
 の範囲は一切補正せずに、意見書で反論しただけで、そのまま登録となっています。
 この特許権がどのような経緯で登録となったかを知るには、特許6020346のページ
 下側にある「経過情報」ボタンから経過情報表示ページを見ていただければわかりま
 す。
  このように特許権の経緯を知ることで、もし裁判になった際に、意見書等の内容を
 逆手にとって反論できますし、また、皆様が広い特許を取ろうとされる際の参考にも
 なります。ぜひ一度覗いてみてください。

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第23回コラム(2019年11月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  「出張面接」という制度をご存知でしょうか?「出張面接」とは『審査官が全国各
 地の面接会場に出張し、出願人と直接会って技術内容や拒絶理由などに関する相談を
 行う』もので、詳細は「出張面接審査・テレビ面接審査の 利用拡大に向けて」に紹
 介されています。

  実際に、この「出張面接」をしてみて驚いたのですが、担当審査官の方へ、希望す
 る住所(都市名等)を伝えると、
  ・特許庁の審査官の方が自ら、面接会場の予約までしてくれる!
  ・しかも、面接会場の費用は特許庁が負担くださる!
  ・東京の特許庁まで行く時間・交通費が節約できる!
  ・事前に申し出れば工場見学もして下さり、より深く発明を伝えることができる!
 等々、非常に良い制度です。
  この他のメリットとして、人対人として直接、審査官の方と会い、実物の説明をし
 苦労した点などをお話することで、「ここをこう書いては如何でしょうか」等のヒン
 下トをさったりする場合があります。また、このような「出張面接」は審判において
 も行われています。
  詳細は「出張面接について」 をご参照ください。
  もし拒絶理由通知を受けて困ったときは、ぜひ「出張面接」をご一考ください。

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第22回コラム(2019年10月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  TVドラマで題材となる戦国武将の『氏名』にちなみ、その関連商品で地域活性化
 等がよくされますが、いざ関連商品の開発・販売をしようと思った際に、その『氏名
 』の一部が既に商標登録されていたことがわかり、いま、その戦国武将ゆかりの地方
 自治体等が、その商標登録の異議申立を特許庁にしているようです。
  これに対して、特許庁のホームページでは、『氏名』のうち、『氏(=名字だけの
 部分)』について、例えば、「山田」、「WATANABE」、「田中屋」、「佐藤商店」
 など、ありふれた氏や名称を普通に表示した商標は商標登録できないとしています。
  ここで、「ありふれた氏」とは、電話帳において同種のものが多数存在するもの等
 をいい、「ありふれた名称」には、「ありふれた氏」に「株式会社」「商店」などを
 結合したものが含まれます。
  詳細は、「出願しても登録にならない商標」中の
 iv) ありふれた氏又は名称のみを表示する商標をご参照ください。

  なお、ここで注意すべきは、『氏名』全体(=フルネーム)や、『名(=下の名前
 だけの部分)』については、登録されるかも知れない点(承諾を得る等が必要な場合
 あり)です。
  しかし、特許庁のホームページでは、戦国武将など『歴史上の人物名』の商標登録
 出願が、
  ①歴史上の人物の名称を使用した公益的な施策等に便乗し、その遂行を阻害し、
   公共的利益を損なう結果に至ることを「知りながら」、
  ②「利益の独占を図る意図」をもってした
 場合には、商標登録できないとしています。
 詳細は、上記特許庁のホームページをご参照ください。

  また、商標は、ご商売に直結します。四国の武将や地名などを商品名に使う際には  他者がその商標を登録していないか、まずは、無料サイトの検索サイト「J-PlatPat
 で検索してみては如何でしょうか。

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第21回コラム(2019年9月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  みなさまの中で、特許等の年金を納め忘れた方はいませんか?
  特許出願等をされ、無事に権利となっても、その権利を維持するためには、特許印
 紙を、基本的に毎年特許庁へ納付する必要があります(毎年払うお金のため、よく「
 年金」と言われます)。このような年金も、納付期限をご自分で管理されている場合
 日々のお仕事に追われ、つい忘れてしまうことがあるかも知れませんが、そんな時に
 も救済措置があります。今回は、その救済措置や、そもそもの納付期限についてお伝
 えします。

 <納付期限>
  お持ちの権利の納付期限はいつでしょうか?特許権や実用新案権の場合、例えば登
 録日が「令和1年8月2日」であれば、通常は3年後の「令和4年8月21日」が最
 初の納付期限で、それ以降は毎年「8月2日」が納付期限です。つまり、登録された
 『月』を覚えておき、その2~3ヵ月前には納付するようにして下さい。
  また、意匠権の場合、例えば登録日が同じ「令和1年8月2日」であれば、通常は
 1年後の「令和2年8月2日」が最初の納付期限で、それ以降はやはり毎年「8月2
 日」が納付期限です。一方、商標権の場合は、例えば登録日が同じ「令和1年8月2
 日」であれば、通常は10年後の「令和11年8月2日」が最初の納付期限(更新期
 限(更新期限)で、それ以降は10年おきの「8月2日」が納付期限です。

 <救済措置1>
  これらの納付期限を過ぎてしまっても、納付期限から6ヵ月後までは、特許印紙を
 追って2倍納付することで、権利が維持されます(これを「追納」と言います)。例
 えば納付期限が「令和1年8月2日」であれば、その6ヵ月後は「令和2年2月2日
 」が追納の期限です。ただし、特許印紙を2倍も納めなくてならないため、極力、納
 付期限を守りましょう。

 <救済措置2>
  追納の期限も更に過ぎてしまった場合、もう1つ救済措置があります。追納の期限
 内に特許印紙を納付することができなかったことについて『正当な理由』があるとき
 は、その理由がなくなった日から2月以内で期間の経過後1年以内(商標だけは6ヵ
 月以内)に限り、特許印紙を追って2倍納付することで、権利が維持されます。例え
 ば、先ほどの追納の期限「令和2年2月2日」から最長1年後(つまり、最初の納付
 期限「令和1年8月2日」から最長1年半後)の「令和2年2月2日」まで追納が認
 められる可能性が出てくるということです。

  ここで『正当な理由』とは、
   ・地震などの天災地変
   ・システム導入等の作業が適切であったにも関わらず、生じたシステムの不具合
 などであるのですが、
  ・定年退職による手続担当者の不在
  ・計画停電によるオンライ手続不能
  ・新社屋建設のため旧新社屋建設の取り壊し
 など予測可能なものは、『正当な理由』とは認められないようです。
 (令和1年6月21日改訂版のガイドラインご参照)
 つまり、この救済措置によって必ず救済される訳でなく、また、『正当な理由』であ
 ることを説明する書類を提出したり、当然に特許印紙は2倍納付であるなど非常に負
 担が大きく、よほど大切な権利でなければ、素直に諦めた方が得かも知れません。

  今回、救済措置をご紹介しましたが、そもそも大切な権利であれば、絶対に納付期
 限を忘れないことがベストです。

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第20回コラム(2019年8月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  前回は、イギリスのEU離脱と、欧州特許や欧州商標などの関係を述べましたが、
 今回は、イギリスなど外国における特許をまとめて調べる機能が、最近、無料検索サ
 イトで増強されましたので、その機能「ワン・ポータル・ドシエ(OPD)」を紹介
 します。
  外国とのご商売をされている方で、「日本で気になる特許があるが、ほぼ同じよう
 な内容で、他の製造国や販売国でも取得されていないか?」と心配されたことはあり
 ませんか。このような場合、今までは、各国ごとの特許庁ホームページや検索サイト
 にアクセスしましたが、結局、1つ1つにアクセスして確認するため、非常に手間が
 かかっていました。
  また、各国の特許をまとめて調べるサイトとしては、世界知的所有権機関(WIP
 O)の検索サイト(PATENTSCOPE)や、欧州特許庁(EPO)の検索サイ
 ト(Esp@cenet)もありましたが、各国(特に、日本以外の国)の特許で、
 どんな書類がいつ提出されたかを一覧で見ることはできず、やはり手間がかかってい
 ました。
  そこで、今年5月7日、日本の無料特許検索サイト(J-PlatPat)に、各
 国の特許をまとめて表示できる「ワン・ポータル・ドシエ(略して『OPD』)」が
 増強されました。なお、「ドシエ(dossier )」とは「書類一式」との意味です。こ
 の「ワン・ポータル・ドシエ」は『OPD』のページにおいて、検索対象としてOP
 D照会の「○」をクリックいただき、日本の特許出願番号をはじめとする各国の文献
 番号から、対応する各国(欧州、米国、韓国、中国、カナダ、国際出願)の関連する
 出願(「パテントファミリー」と言います)や、審査関連情報(ドシエ情報)を一括
 して、PDF形式や、テキスト形式にて照会することができます。
  もし、日本以外の国の特許を調べたい場合には、この「ワン・ポータル・ドシエ『
 OPD』」もお使いになっては如何でしょうか。

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第19回コラム(2019年7月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  多くの方(特に、外国とのご商売をされている方)が注目されているかと思います
 が、2016年6月24日、イギリスの国民投票でEU離脱への賛成票が過半数を越
 え、イギリスがEUから離脱することが決定的となり、未だ、どのような形で離脱す
 るのか等はわかりません。
  その日、日経平均株価の始値は「16,333.87円」だったにも関わらず、終値は「1
 4,952.02円」と、1日で約「1380円」も下落し、外国為替も、始値「1ドル(米
 ドル)=106.13円」から、途中「1ドル(米ドル)=99.08円」となった後、結局、終
 値は「1ドル(米ドル)=102.19円」と1日で約「4円」も円高となりました(円・ポ
 ンドの為替レートも激しく動きました)。実際ご商売をされている方も、市場も、経
 済がどうなるのか?先が読みにくく、戦々恐々としてらっしゃるのかと思います。
  このようなEU(つまり、欧州(ヨーロッパ)連合)の変化は、株価や為替、実体
 経済だけでなく、ヨーロッパにおける特許や商標などの知的財産権にも影響を及ぼし
 ます。そもそも、EUは、ヨーロッパを経済的・政治的に1つに統合しようとするも
 の(イギリスを除く加盟国数は27)ですが、知的財産権の世界にも、ヨーロッパを
 1つに統合しようとするものがあり、以下にその影響をまとめます。

 <1>特許
  ヨーロッパの特許を1つに統合しようとするものとして、欧州特許(European Pa
 tent:EP、加盟国数は38)がありますが、これを管轄する欧州特許庁(Europea
 n Patent Office:EPO)は、EUとは完全に別組織であるため、基本的に影響が
 ありません(引用:欧州特許庁)。
 <2>商標
  商標にも、ヨーロッパを1つに統合しようとする欧州商標(European United Tra
 deMark:EUTM)があり、これを管轄する欧州連合知的財産庁(European Unio
 n Intellectual Property Office:EUIPO)は、EU内の1組織であるため、イ
 ギリスが正式にEUから離脱した場合には、イギリスでの効力を失うものの、下記引
 用で言及されているように、離脱交渉終了まではイギリスはEUのメンバーであり、
 現時点において早急に対応すべきことはありません(引用:欧州連合知的財産庁)。
 <3>意匠
  意匠にも、ヨーロッパを1つに統合しようとする登録共同体意匠(Registered Co
 mmunity Design:RCD)があり、これも、商標と同様、EU内の1組織である欧
 州連合知的財産庁が管轄しているため、イギリスが正式にEUから離脱した場合には
 、イギリスでの効力を失うものの、下記引用で言及されているように、離脱交渉終了
 まではイギリスはEUのメンバーであり、現時点において早急に対応すべきことはあ
 りません(引用:欧州連合知的財産庁)。

  なお、欧州特許庁、欧州連合知的財産庁ともに、イギリスの国民投票の結果が分か
 った日に、上記で引用したコメント・共同声明を出していることから、イギリスのE
 U離脱に備えて、ある程度、準備をしており、また、イギリスの正式離脱前に欧州商
 標や登録共同体意匠の権利を取得した場合には、何らかの移行措置を設けられること
 が、予想されます。

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第18回コラム(2019年6月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  ご存知の方もいらっしゃるかも知れませんが、特許庁のホームページにおける
 「自らの商標を他人に商標登録出願されている皆様へ(ご注意)」にて注意喚起され
 インターネット等の記事でも取り上げられた「自らの商標を他人に商標登録出願され
 ている」場合について、今回はお話しますと共に、ただ「自らの商標を他人に商標登
 録出願されている」と言われてもピンと来ませんので、もう少し踏み込みます。

 「2018年公開商標公報 出願人ランキング」(株式会社root ip様が運営される「知財
 ラボ」のサイト)を拝見しますと、有名な企業がベスト10に並ぶなか、見慣れない
 会社や個人もランクインしています。このうち、1、2位の会社・個人は、特許情報
 プラットフォーム(J-PlatPat)の「商標検索」にて少し下にスクロールいただいて、
 「その他の検索キーワード」の検索項目を『出願人/権利者/名義人』とした際の検索
 キーワードの欄に「○○○…○株式会社(※株式会社まですべて入力下さい)」や「
 □□□□(※姓と名の間を空けずに入力下さい)」を入力すると、約20000件や
 2928件もの出願をしていることがわかります(件数は、閲覧いただく時期によっ
 て変わります)。
  これらのうち、約20000件のうちの最初の3000件や、2928件は表示可
 能ですので閲覧してみますと、ざっと見ただけでも、「軍師官兵衛」や「海外交通・
 都市開発事業支援」、「半導体レーザー」「ネット通販」・・・等々を大量に出願し
 ています。
  なお、この1、2位の会社・個人の住所は「大阪府茨木市」で、明らかに自らと無
 関係の商標ばかりを出願しています。

  このような状況ですと、軍師官兵衛ゆかりのお土産等を製造している会社や、海外
 交通・都市開発事業支援を行う組織、半導体レーザーの開発を行っている会社、ネッ
 ト通販を行う会社などの事業に支障が出たり、これらの会社が、仮に上述した商標を
 出願しても、この1、2位の会社・個人の商標出願がある等のため、登録できない状
 態と成り得ます。
 だからこそ、特許庁はホームページで、
  ・出願公開公報やJ-PlatPatにて、他人の商標「出願」が公表されても『登録された
   たものではない』旨
  ・他人の著名な商標の先取りとなるような出願や、第三者の公益的なマークの出願
   等々の場合(上記1、2位の会社・個人のような場合)は、そもそも商標登録さ
   れることはない旨(つまり、特許庁として商標登録にしない旨)
  ・従って、仮に自らの商標が、上記1、2位の会社・個人のような他人から出願さ
   れていたとしても、登録にはならないので、軍師官兵衛ゆかりのお土産等を製造
   している会社や、海外交通・都市開発事業支援を行う組織、半導体レーザーの開
   発を行っている会社、ネット通販を行う会社などは、自らの商標登録を断念しな
   いで下さいとの旨
 を周知したと考えます。

  一方、この1、2位の会社・個人は、約20000件や、2928件の出願を手間
 をかけてしましたが、結局登録しませんと言われ、無駄な労力を払ったことになりま
 す。ずるいことをしたらあかんと思います。

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第17回コラム(2019年5月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  今回は、内容を知りたい出願や、その出願に関する無効審判などの審決文・判決文
 を、無料で手に入れる方法について、意匠登録を例として述べます。

 【出願・審決文】
  <1>
  特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)の「意匠番号照会」における種別「意匠公
 報(S)」の欄に、気になる意匠登録の番号を入力し、「照会」ボタン(画面1-1ご参照
 )を押すことで、この意匠登録自体の内容や、拒絶査定不服審判の内容が、無料で閲
 覧・ダウンロードできます(画面1-2ご参照)。
  <2>
  画面1-2における意匠登録の番号のリンクを押すことで、意匠公報の発行日や登録
 番号、登録日などを見られるページ(画面1-3ご参照)が開き、更に、このページの
 上方右側にある「経過情報」ボタンを押すことで、「基本項目」などの経過情報が閲
 覧できます(画面1-4ご参考)。
  <3>
  画面1-4において、その出願に関して審判が請求されていれば「審判情報」のタグ
 が存在し、これをクリックすることで拒絶査定不服審判などの「審判情報」が閲覧で
 きます(画面1-5ご参考)。多くの出願は審判があったとしても拒絶査定不服審判ま
 でですが、稀に無効審判等の審判も請求されており、この場合には、画面1-5におい
 て赤で丸をつけたように「次審判情報」をクリックすることが出来ます(意匠以外で
 も、同様に「次審判情報」で、無効審判等の審判の情報を閲覧できます。)
  <4>
  この「次審判情報」をクリックすることで、拒絶査定不服審判以外の審判情報を閲
 覧でき(画面1-6ご参照)、更に、画面1-6において赤で丸をつけた審判番号をクリッ
 クすることによって、無効審判などの審決文が無料で閲覧できます(「PDF表示」
 のタグをクリックすることで、審決文を1頁ずつダウンロードすることも、無料で出
 来ます)。

 【判決文】
  <1>
  裁判所の「裁判例情報」のページを開き(画面2-1ご参照)、この画面2-1において
 は「統合検索」などのタグがあり、この「統合検索」にて、内容を知りたい判決文を
 検索しても良いですが、これらのタグの一番右端の「知的財産裁判例集」のタグをク
 リックすることで、意匠権などの知的財産に関する裁判について、意匠権に関するも
 のだけなど工夫した検索が出来ます(画面2-2ご参照)。
  <2>
  例えば、この画面2-2において、
   ・『裁判所名』には「大阪地方裁判所」を入力し、
   ・『事件番号』には「平成22年」を入力し、
   ・『権利種別』には「意匠権」と「商標権」にチェックを入れて検索したところ
 (画面2-3ご参照)、「5件」見つかりました(画面2-4ご参照)。
  <3>
  この画面2-4では、検索したそれぞれの裁判について、赤で丸をつけた2カ所の両
 方から、判決文を無料で閲覧・ダウンロードが出来ますが、左の赤い丸をクリックす
 ると、判決文以外に別紙がある場合には、その別紙も無料で閲覧・ダウンロードでき
 ますので、ご留意ください(画面2-5ご参照)。
  このほか、画面2-2における「全文」にて、内容を知りたい裁判をした企業名や物
 品名などのキーワードを入力して検索したり、画面2-2における「裁判年月日」にて、
 内容を知りたい裁判の判決言渡の時期を入力して検索しても良いです。

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第16回コラム(2019年4月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  以前、商標(図形商標)の検索についてご紹介しましたが、今回は、意匠(英訳す
 ると「Design(デザイン)」)の検索について述べます。製品は、デザイン1つで売
 れることもあれば、性能はいいのに、デザインが悪いために売れないこともあり、み
 なさまも、製品のデザインについて日々悩まれ、苦労されているのではと思います。
 しかし、ご自分のデザインが、知らないうちに他人の意匠権を侵害して、警告書など
 を受けるかも知れません。
  そこで、製品をデザインされる際には、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)の
  【A】「意匠公報テキスト検索」や、
  【B】「日本意匠分類・Dターム検索」等で、
 事前に調べておく方が無難です。

  意匠検索のコツは、そのデザインを使いたい『製品が何か?』です。
 例えば、製品 が「消しゴム」の場合、
 <1>【A】意匠公報テキスト検索のページ中の「意匠に係る物品」の欄に「消しゴ
     ム」と入力し、「検索」ボタンを押します。
     →どうやら、「103件」見つかったようです(画像1ご参照)。
 <2>この「103件」か、隣の「一覧表示」を押すと、直方体やサンタクロースな
    どの消しゴムが表示されます(画像2ご参照)。
     →順次、下へスクロールしながら、使いたいデザインと似ているものがある
      かを確認します。
     →似ているか?の判断は、特許庁の
      「意匠審査基準の新規性9頁以降」などに示されています。
     →製品が同じ「消しゴム」で出てきたデザイン同士は互いに非類似だから登
      録されているわけで、似ているか?の参考になります。
 <3>一度に50件ずつしか表示できないため、一番下までスクロールしたら、「次
    の50件」か「2」等を押してください(画像3ご参照)。
     →この作業を103件目が表示されるまで繰り返します。

  ただし、この【A】の「意匠公報テキスト検索」を使った検索は、物品名や意匠権
 者等のキーワードから、2000年1月以降発行の意匠公報を表示しているに過ぎな
 いため、【B】の「日本意匠分類・Dターム検索」等を使った方が、漏れもなく無難
 です。ぜひ【B】の検索もしてみてください。

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第15回コラム(2019年3月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  みなさま、「不正競争防止法」という法律をご存知でしょうか?今までのご紹介は
 権利行使をする前に、権利化という費用・時間がかかる特許法や商標法等のお話がメ
 インでしたが、権利化をせずとも、権利行使できる点が不正競争防止法の大きな特徴
 です。この不正競争防止法の保護対象の1つに『営業秘密』がありますが、
 この『営業秘密』とは、
  ①「秘密として管理されている」もの
  ②「生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報」で
   あること
  ③「公然と知られていない」もの
 を意味し、これら①~③の要件を全て満たさなければ、不正競争防止法によって保護
 されません。ここで、ポイントは、秘密状態の管理が甘い場合(つまり、①の要件を
 満たしていない場合)、いくら大切な情報であっても、法律は守ってくれないという
 ことです。
  そのために経済産業省から『営業秘密』の管理の仕方の「営業秘密管理指針」が示
 されており、この指針には、具体的な裁判例や、紙媒体・電子媒体等ごとに管理方法
 の例示がありますので、是非ご参考にしていただければと思います。このような不正
 競争防止法を知った経営者様であれば、「我が社は、営業秘密としてしっかり管理す
 るから、特許等はとらなくても良いじゃん」とお考えになるかも知れません。しかし
 ご商売で「物」を小売等する場合、売った商品を分解すれば(リバースエンジニアリ
 ングすれば)、秘密はばれ、真似をされます。しかも特許等がなければ止められませ
 ん。一方、製造方法や検査方法などの「方法」は、普通、相手の会社の工場内で使用
 されますので、特許等を取っても裁判での立証が難しいです。更に「こいつは侵害し
 ているはず」と相手の工場に踏み込んだは良いのですが、もし侵害していない場合は
 ただの不法侵入で逆につかまります。

 つまり、
  <A>小売等する「物」は、特許法や実用新案法、意匠法等で守る
  <B>製造中の温度や時間などの条件などの「方法」は、
     ノウハウ(営業秘密)として、外に漏れないように厳重に管理する
       ※但し、展示方法のように、不特定多数の前で行う方法は除く
 ように、「物」と「方法」に分けて、不正競争防止法・特許法等を組合せ、上手に活
 用することをお勧めします。

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第14回コラム(2019年2月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  前回の最後に、新規参入分野と特許とお書きしたものの、今回は、ある裁判例につ
 いてお話します。
  椅子などの家具をデザインし、それを守りたいと考える場合、通常、意匠出願をし
 て意匠権を取得します。この意匠権は登録から20年で消滅してしまうため、そのデ
 ザインが登録されて20年経てば、他社が自由に製造・販売等できました。ところが
 現在、下記の裁判例のように、家具等のデザインが20年経っても守られる可能性が
 出てきています。
  第1審の東京地方裁判所平成25(ワ) 8040 (裁判年月日:平成26年4月17日)著作権
 侵害行為差止等請求事件では、従来の裁判例通り、『原告製品のデザインが・・・実
 用的な機能を離れて見た場合に、美的鑑賞の対象となり得るような美的創作性を備え
 ているとは認め難い。』として、原告製品のデザインは著作物でないため、非侵害と
 判断しました。
  しかし、その第2審の知的財産高等裁判所平成26年(ネ)10063 (裁判年月日:平成
 27年4月14日) 著作権侵害行為差止等請求控訴事件では、『作成者・・・の個性が発
 揮されており、「創作的」な表現というべきである。従って、第2審判決文の46頁
 示された控訴人製品(つまり、原告製品のデザイン)は・・・著作物性が認められ、
 「美術の著作物」に該当する。』として、原告製品のデザインは著作物であると判断
 されました。
  なお、侵害か?については、原告製品のデザインは、第2審判決文の47~66頁に示
 された被控訴人製品(つまり、被告製品のデザイン)とは類似していないとして非侵
 害と判断され、その後、第3審の最高裁での判決文は出ていないようですので、結果
 的には、第2審の裁判(つまり、原告の負け)で確定したようです。
  この裁判により、今後、椅子等のデザインは、『デザイン作成者が亡くなられてか
 ら50年(改正されれば70年)経たなければ、他社が自由に製造・販売等できない
 』と判断される可能性が出たため、家具デザインをされる方は、是非ご留意くだされ
 ばと思います。

  最後に余談で恐縮ですが、我々弁理士は、特許などの出願やご相談など、普段お客
 様からのご依頼をいただき仕事をしていますが、特許法などは毎年改正され、新しい
 裁判例も出ていることから、自ら調べたり、講義・講演を受け、「今」の知財を学ん
 でいます。また、講義等のあとには講師の方を交えて、よく打上げをするのですが、
 打上げでの話こそ、知財に関わる方の本音が出て大変勉強になります。今回ご紹介し
 た裁判例は、そのような場で「気になるね」と話題になったものです。

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第13回コラム(2019年1月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  昨年の後半は、著作・意匠・商標等を話題にしましたが、新年最初は、改めて特許
 についてお話します。
  日々の業務や無料相談では「特許が取れますか」や「拒絶理由にどう反論すれば良
 いか」等の質問が多いのですが、特許を取ることよりも、取った特許が「使える特許
 」か?(つまり、お金になるか?)の方が、大切ではと感じています。特許を使った
 例として、以前、賠償金が約3億3600万で米アップル社との裁判に勝訴した日本
 の発明家を紹介しましたが、勝つまでに、莫大な費用(訴額の1割であれば3千万円
 ~10億円)や7、8年(2007年~2015年)という時間がかかっています。
 しかし、誰もがそこまでのお金や時間をかけることはできません。そこで、費用や時
 間を最小限にした特許の「使い方」を2つご紹介します。

 <1>早期審査
  商品を売る際、「特許済み商品」として営業をかけた方が、顧客へアピールできる
 と思います。しかし、商品のライフサイクルは非常に短くなっている一方で、特許出
 願から権利化までの平均期間は14.1ヵ月(特許行政年次報告書2018年版<本編>
 のPDFの頁目)」です。従って、やっと特許になった頃には、既にその商品の寿命
 が過ぎていたということも有り得ます。そこで、特許出願・出願審査請求と共に、早
 期審査を申請すると、審査期間は2.3ヵ月(特許行政年次報告書2018年版<統計・
 資料編> 第2章 主要統計 18.早期審査・早期審理 (1)審査)」に短縮され、『特許済
 み』の新商品として、売上に貢献できると思います。なお、特許庁への費用は無料で
 申請手続はご自分でも出来ます(特許事務所へ申請手続を依頼した場合でも、その費
 用は平均して数万円です。)

 <2>発明の名称の工夫
  特許の審査をクリアし、無事に特許権を取得した際、特許庁で示された『見本』の
 ような特許証が送付されます。送付された特許証は、額に入れて飾ったり、特許証の
 カラーコピーを顧客に配布したり、HPにアップする特許権者様もおられます(展示
 会で特許証を飾った際には、来場者が特許証をずっと眺めていました。一般の方にと
 って特許証はインパクトがあるようです。)。
  このような特許証には、「特許番号」等が記載されていますが、このうち、その特
 許内容のヒントとなり得るのは、実は「発明の名称」だけです。この「発明の名称」
 を、見本のように「コンピュータ」とだけ書くのではなく、例えば「高齢者・初心者
 のための入力支援システム用コンピュータ」など、商品を説明する名称とした方が、
 顧客に特許証を見せた際に「高齢者って、儂も使えるかのう?」や「入力支援って、
 どう使いやすいの?」などをきっかけに、セールストークが広がり易いと思います。
 しかも、特許庁や特許事務所に払う出願費用は、「発明の名称」の文字数に関係なく
 一定です。

  特許出願の際は、ぜひ上記<1>、<2>もご検討ください。
  次回は「新規分野参入と特許」についてお話します。

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第12回コラム(2018年12月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  前回までに著作権、意匠権ときましたので、今年最後は商標権について述べます。
 この商標権も、おおもとの法律である商標法に「類似」という曖昧な言葉が使われて
 おりますが、似ているか?否か?の判断は、商標審査基準の第3における
 第4条第1項第11号(先願に係る他人の登録商標)に多くの例示がされており、比較的
 予測しやすいと思います。
  一方で、以前にもふれたエンブレムとも関係するのですが、エンブレムやマークの
 みで、文字が一切ない「図形商標」については、上記の商標審査基準にはほとんど記
 載がなく、知らないうちに他人の商標権を侵害して、警告書などを受けるかも知れま
 せん。
  そこで、エンブレムやマークのみを使用される際には、特許情報プラットフォーム
 (J-PlatPat)の「図形等商標検索」で、事前に調べておく
 方が無難です。この「図形等商標検索」のコツは、いかに適切な図形等分類番号(例
 えば「3.13.10」や「10.3.7」など)を見つけるか?ですが、

 <1>
  まず使いたいエンブレム等を、全体的なイメージを一言で表す言葉(キーワード)
 を、いくつか思い浮かべてください(例えば「カブトムシ」「扇」やなど)。
 <2>
  次に、「図形等分類表」のページ中から、思い浮かべたキーワードに対応するかし
 ないか?を検索します。この検索の際、「Ctrl + F(=Ctrlキーを押しながら同時に
 Fキーを押す)」すると、何れのブラウザであっても閲覧中のページに、小さな入力
 ウインドウが表示されますので、そこに思い付いたキーワードを入力してください。
 速く・漏れなく図形等分類番号がわかります。
 <3>
  いざ「図形等商標検索」ページ中の『図形等分類1~3』に、見つけた図形等分類番
 号(「3.13.10」や「10.3.7」など)を入力し最後に検索ボタンを押してください。
 <4>
  もし2000件以上ヒットしますと、結果が表示されません。
 そこで、「図形等商標検索」ページ中の『区分』等に、使いたい商品・役務に対応し
 た区分番号等を入力し、ヒット件数を2000件以下にしてから、結果を表示してく
 ださい。
  また、このように『区分』等を入力した場合の検索結果は、それらが互いにマーク
 非類似だから登録されているわけで、「図形商標」の類否判断の参考になります。
  来年は、「使える特許」についてお話します。

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第11回コラム(2018年11月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  前回は、著作権について述べましたが、今回は、意匠権(特に、意匠が類似か否か
 (類否判断))について述べます。
  そもそも意匠権とは、特許権のようにアイデアを保護したり、商標権のように商品
 ブランド等を保護するのではなく、乗用車や電化製品等のある用途・機能を持った「
 物品」における「外観(形状・模様・色彩などのデザイン)」を保護するものです。
 これら「物品」と「外観」の両方が同一・類似のとき、初めて意匠として同一・類似
 となり、この同一・類似の範囲で物品デザインが保護されます(例えば、同じ外観(
 デザイン)の乗用車とミニカーでも、物品(用途・機能)が異なるため、意匠として
 は非類似)。
  逆に言えば、この同一・類似か?非類似か?の判断(類否判断)が上手くできなけ
 れば、意匠権を活用できません(非類似の侵害品に対して裁判すれば、負けて、裁判
 費用がかかるだけです)。この類似か?の感覚は人によって違うとも言えますが、法
 律では次のように規定されています。

 <意匠法第24条第2項>
  登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を通じて起
 こさせる美感に基づいて行うものとする。

  また、意匠出願を審査する特許庁では、「意匠の類否判断」として、意匠審査基準
 の第2部第2章の9~17枚目(頁下部の表記で28~36頁目)にて、詳しく説明
 されています。
  このような類否判断の練習として、以下の裁判例について、あなたが類似か?非類
 似か?を判断してください。
 <1>東京地方裁判所
    平成24(ワ)33752 (裁判年月日:平成27年2月26日)意匠権侵害差止等請求事件
     ・意匠権1の体重計
     ・被告の体重計
     ・判決文 別紙1
     ・類否判断のポイント
 <2>同じく東京地方裁判所
    平成24(ワ)33752 (裁判年月日:平成27年2月26日)意匠権侵害差止等請求事件
     ・意匠権2の体重計
     ・被告の体重計
     ・判決文 別紙2
     ・類否判断のポイント

 <1>、<2>について、あなたの判断と、裁判の類否判断は一致していましたか?
 なお、裁判の結果と理由で言及した「要部」からは、基本的に公知である部分(=創
 作性がない部分)が除かれます。また、上記裁判において、被告から原告に支払われ
 る損害金は1億2915万3662円で、そのうち、弁護士費用は1174万円でし
 た。次回は、「商標」について述べます。

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第10回コラム(2018年10月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  前回は、エンブレムやトートバッグのデザインに関わる著作権侵害について述べま
 したが、今回は、著作権の侵害(表現形式)を判断する際の練習として、
 以下の2つの裁判例について、あなたが類似か?非類似か?を判断してください。
 <1>東京地方裁判所
    平成13(ワ)16440(裁判年月日:平成14年9月5日)著作権侵害差止等請求事件
     ・著作物の画面
     ・被告の画面
     ・判決文 別紙1
     ・判決のポイント

  また、著作物は、<1>のような画面や、前回の写真・デザインだけでなく、下記
 のスローガンや、小説なども含まれます。
 <2>東京高等裁判所
    平成13(ネ)3427(裁判年月日:平成13年10月30日)損害賠償請求控訴事件
     ・著作物のスローガン
     ・被告のスローガン
     ・判決文
     ・判決のポイント

 <1>、<2>について、あなたの判断と、裁判の結果は一致していたでしょうか?
  特に<1>で言及された「創作性」は、意匠権における類似か?非類似か?の判断
 に近く、次回は、「意匠」について述べます。

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第9回コラム(2018年9月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  これまでは特許や商標の権利活用を中心に知財の現場でのお話をお伝えいたしまし
 たが、知財の業界も日々変化し、これから重要視されるのは著作権だと感じます。
  例えば、数年前、某デザイナーによるエンブレムやトートバッグの問題が話題に出
 ていますが、これは、著作権侵害によって事業に大きな影響(業績低下・イメージ悪
 化)があることを示しています。
  このような著作権について、今のインターネットの時代においては、自社のデザイ
 ン等が勝手に模倣されたり、または、他社のデザイン等を知らずに使ってしまうこと
 が十分に起こり得ます。そのため、著作権の裁判で判断される侵害か?非侵害か?の
 境目を知ることが大切になります。

  この境目(著作権の裁判において裁判官が判断するポイント)は、以下の4つで、
 これら全てを満たさない限り著作権侵害とはなりません。
   ① 著作物か?(著作権法で規定する要件をすべて備えた著作物か?)
   ② 著作権者か?(著作権を有する本当の権利者か?)
   ③ 依拠・類似したか?(その著作物を見て(依拠して)類似したか?)
   ④ 利用許諾等を受けたか?
  これら①~④のうち、特に③がポイントになるかと思います、この③を判断する練
 習として、以下の2つの裁判例について、あなたが侵害か?非侵害か?を判断してく
 ださい(なお、①、②、④は満たしているとします)。

 <1>最高裁判所第三小法廷
    昭和51(オ)923(裁判年月日:昭和55年3月28日)損害賠償事件
     ・著作物の写真
     ・被告の写真
     ・判決文
     ・判決のポイント
 <2>東京地方裁判所
    平成11(ワ)20965(裁判年月日:平成11年12月21日)著作権侵害確認請求事件
     ・著作物のイラスト
     ・被告のイラスト
     ・判決文 別紙1
     ・判決のポイント

 <1>、<2>について、あなたの判断と、裁判の結果は一致していたでしょうか?
 これらで言及された「表現形式」をふまえると、某デザイナーのトートバッグ問題に
 おける「BEACH」の矢印やフランスパンは明らかに③を満たしますが、水着の女
 性は、③を満たなさいと言えると思います。

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第8回コラム(2018年8月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  特許や商標などの権利を活用する際、裁判の費用は通常1千万円以上、確定までの
 期間は数年かかるため、いきなり裁判を行うのではなく、必ず相手の企業等(又は、
 その代理人)と交渉します。
  その交渉では、まず内容証明にて、
   ・特許や商標などの権利を有していること
   ・相手の製造販売等の行為が、当該行為の侵害であること
   ・締め切りまでに回答すること
 などを記載した文書を、相手の状況に応じて送ります。
  この文書も、色々な種類があり、
   ・侵害しているか曖昧なときは「お知らせ文」
   ・明らかに侵害しているときは「通告書」、「警告書」など
 状況に応じて使い分けます。

  そこで、お知らせ文の例を、こちらにて公開しておりますので、詳しく知りたい方
 はご確認ください。

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第7回コラム(2018年7月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  裁判等にて、特許や商標などの権利を活用するには、当然、事前に特許庁の審査を
 クリアしなくてはなりません。
  この審査をクリアするための条件は、細かく言えば、色々あるものの、要するに「
 以前と同じもの、似ているものは、権利にしません」ということです。
  よって、特許や商標などの権利を取るためには、世の中に「同じようなものがある
 か?」を事前に調査することが、ポイントになります。

  この調査ツールとして、
 「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」
 (https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage
 という無料の検索サイトがあります。

  この検索サイトで、ご自分が作った発明や、思いついた商標等と同じものや似てい
 るものがあるかをお調べください。
  ご自分で調べていただいた方が、『弁理士費用等が少しでも抑えられます』。

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第6回コラム(2018年6月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  前回、米アップル社と日本の発明家の裁判でご紹介したように、裁判とは、何億と
 いうお金も国の執行力で動かし得る制度です。このような裁判(特に、特許裁判)で
 勝つには、どうすれば良いか?それは、裁判官が自分に有利な判決を出してくれるよ
 う、裁判官を知ることです。では、裁判官の方が裁判で何を見ているか?それは、特
 許書面の一部です。

  例えば、前回の特許権(特許第3852854号)は、図面を含めると20頁もありま
 す。書いている文章も、普段使わない言葉ばかりで、非常に読みにくいです。
  実は、裁判官の方も同じように感じています。
 (裁判官の多くは、法学部等の文系出身で、裁判官の方とお話する機会もあるのです
 が、技術について苦手意識を持ってらっしゃるようでした。)

  しかし、そのような裁判官でも、主に見ているのは『特許請求の範囲』だけで、判
 断したのは以下A~Fのチェックポイントです(実際の裁判では少し訂正されていま
 す)。
 A:リング状である軌跡上に連続してタッチ位置検出センサーが配置されたタッチ位
   置検知手段と、
 B:接点のオンまたはオフを行うプッシュスイッチ手段とを有し、
 C:前記タッチ位置検知手段におけるタッチ位置検出センサーが連続して配置される
   前記軌跡に沿って、前記プッシュスイッチ手段が配置され、かつ、
 D:前記タッチ位置検知手段におけるタッチ位置検出センサーが連続して配置される
   前記軌跡上における押下により、前記プッシュスイッチ手段の接点のオンまたは    オフが行われる
 E:ことを特徴とする接触操作型入力装置
 F:を用いた小型携帯装置。

  裁判では、このA~Fの「チェックポイント」と「疑わしい実物」を見比べて、そ
 の実物がチェックポイントを『すべて』持っていた場合のみ、裁判官は「侵害」と判
 断します。逆に言えば、チェックポイントの数が少ない(=余計なことは書かない)
 方が、裁判官は判断し易いですし、侵害と認められる可能性が高くなります。
  特許裁判の「勝ち・負け」は『特許請求の範囲』で決まり、ここの文量が少ないほ
 ど「勝つ」可能性が上がります。

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第5回コラム(2018年5月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  今回は、ある裁判のお話をします。米国企業「アップルインコーポレイテッド(米
 アップル社)」の日本法人に対し、最高裁まで勝った日本の発明家がいらっしゃいま
 す。損害賠償額は、約3億3千万円です。
  その発明家の特許内容と、第一審・第二審の判決文を、以下に示します。

 特許権:発明の名称「接触操作型入力装置およびその電子部品」、特許第3852854号

 第一審(東京地方裁判所):事件番号「平成19(ワ)2525」 全文別紙

 第二審(東京高等裁判所):事件番号「平成25(ネ)10086」 全文

  ちなみに、米アップル社の2016年10月25日現在の資本金は、なんと
 128.249billionUS$(当時のレートで約13兆円)です。

  つまり、裁判に『勝てば』、資本の額に関わらず、国の執行力で、損害賠償金をと
 れるということです。これが裁判の本質であり、大企業であっても、知財にお金をか
 ける理由です。
  次回は、裁判の「勝ち・負け」は、どこで決まるか?についてお話します。

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第4回コラム(2018年4月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  前回詳しくご紹介した『輸入差止申立』ですが、特許権や商標権等だけでなく、「
 著作権」や「不正競争防止法」に基づいて行うことも出来ます。

 「著作権」に基づいて申立を行う場合の具体的手順
  http://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/pages/b_004_5.htm

 「不正競争防止法」に基づいて申立を行う場合の具体的手順
  http://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/pages/b_004_7.htm

 つまり、特許権等を持っていない方や特許等を出願中の方でも、知財を活用する方法
 はあり、今すぐにでも侵害品の輸入を止めたい場合には、ぜひ『輸入差止申立』をご
 検討ください。

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第3回コラム(2018年3月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  前々回で述べた「知財を使って相手と争う5つの手段」のうち、今回は「輸入差止
 申立」をご紹介いたします。
  税関による「輸入差止申立」は、費用負担が少なく、数か月で決着がつき、親身に
 相談に乗って下さるため、経営者の方にとって選択肢に入れるべき制度です。
  また、全国9つの税関の何れかで「輸入差止申立」が受理されれば、全国すべての
 税関で輸入差止が行われるため、最寄りの税関に申し立てれば良い点も魅力です。
  なお、四国や広島県等は、神戸税関の管轄となっており、各県に支署等があります
  http://www.customs.go.jp/kyotsu/map/kobe/kobe_m.htm
 (神戸税関「所在地案内」より)。

  私も、特許権等を有した権利者側の立場にて、2014年11月に神戸税関で開催
 された「税関知的財産セミナー」に参加し、差止申立がどのようなものか理解するこ
 とが出来ました。
  その後、相手方へ送った通告書には、税関への「輸入差止申立」等しかるべき法的
 手段も辞さない旨を書き、最終的には、相手方との交渉により、日本国内における模
 倣品の製造・販売等を止めることが出来ました。

  知財を使って相手と争う際には「輸入差止申立」につきましても、ぜひご検討くだ
 さい。

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第2回コラム(2018年2月)

 堀家特許事務所の弁理士・堀家です。
  前回は、知財を使って相手と争う5つの手段と、それぞれにかかる期間・概算費用
 を述べましたが、今回は、そのうちの1つ「交渉」の例として、ある年の交渉現場で
 起こったことを、時系列に従ってご紹介します。
(私は、交渉を持ちかけられた(=侵害だと言われた)B社側として対応しました。)
 ①5月18日:A社からB社へ「A社特許を侵害している。直ちに製造・販売等を中
  止し、5億円の損害賠償を支払え。」との通告書が、内容証明で届く。
 ②6月21日:B社からA社へ「B社製品は、A社特許と○○の点で相違し、侵害し
  ていません。」との内容証明を返送。
 ③7月14日:A社からB社へ「○○の点で相違していると言うなら、B社製品の詳
  細を明らかにし、根拠を示せ。」との催告書が、内容証明で届く。
 ④7月29日:B社からA社へ「B社製品を試験機関で分析したが、○○の相違が確
  認されました。何故警告をするのか不明です。」との内容証明を返送。
 ⑤8月 3日:A社からB社へ「直接会う面会で、互いの分析結果を開示し、合意点
  を探りませんか。」と電話にて提案される。
  以後、8月5、25、30日、9月1日に、A社・B社の代理人同士で電話交渉をして、面会
  日を決定。
 ⑥9月15日:A社側2名・B社側5名が貸会議室で面会を行ったが、A社社長は『
  B社製品でないもの』を証拠に警告していたことが判明。
  B社代理人からA社代理人へ「このまま裁判にいったら、笑われますよ。社長を止
  めるのも役目です。」と伝えて、面会終了。
 ⑦11月15日:面会から2ヵ月経過したが、A社からの連絡は一切なく、交渉終了。

  この5月18日~11月15日までの交渉で、B社側が支払った金額は、試験機関
 の費用・代理人費用を含め、52万円ほどでした。
 B社の担当者様は、和解金等も想定して、B社社長から「500万の予算をやる」と
 言われていたそうです。
  なお、1ヶ月・5万円で終わった交渉もあり、全ての交渉に約6ヵ月・50万かか
 る訳ではありません。

  勝負の分かれ目は『A社社長が、B社製品をよく調べてなかったこと』です。

  もし、あなたがA社側であれば、他社製品が「似ているな」と思っても、まずはそ
 の製品を入手し、徹底的に調べて下さい。
  もし、あなたがB社側であれば、突然「侵害している」との内容証明がきても、自
 社製品を分析し、相手の特許等(知財)との違いを見つけて下さい。

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第1回コラム(2018年1月)

 堀家特許事務所の弁理士で堀家と申します。
  知財(知的財産)につきまして、インターネット等で検索しても知ることが出来な
 い知財現場でのお話を、お伝えできればと思います。
  第1回は、知財を使って相手と争う場合、その手段の種類と、それぞれにかかる期
 間・概算費用(各機関への費用・代理人費用を含む)のお話です。

  相手と争う手段として、以下の5種類の方法があります。経営者にとって、結局「
 時間どれくらいかかる?」・「総額の費用は?」で、争うか否か、何の方法で争うか
 等を判断されると思います。
             平均期間  概算費用
 ①交渉(示談)   : 約6ヵ月   50万
 ②裁判外紛争解決手続:  約1年  100万
 ③輸入差止申立   : 約3ヵ月   30万
 ④無効審判     :  約1年  150万
 ⑤裁判       : 2~3年 1300万

  これら①~⑤までの方法のうち、期間や費用を考えれば、当然、①の「交渉」が一
 番良いです。従って、何れの会社も、いきなり裁判等を起こすことはほぼなく、まず
 は内容証明郵便などで「侵害してますよ」等の交渉を行います。
  また、今の日本、やはり争っていることが世間に知れると、イメージの問題があり
 ます(「あそこ、争ってる会社やで」、「訴えられている会社から、もの買いとうな
 いな」等)。
  そのため、相手と争う際には、世の中に知れるか(公開されるか)も、判断のポイ
 ントで、上述した①~⑤のうち、①~③は非公開、④は決着が付けば公開、⑤は決着
 前の口頭弁論から公開です。
  よって、知財を使って勝つとは、⑤の裁判等を意識させながら、出来るだけ「①の
 交渉で終わる」ことです。
  次回から、①~⑤それぞれの方法について、詳細や、実際にあったこと等をお伝え
 いたします。

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